大自然の恵みを受けた水を今も供給中、清らかな湧水を湛える熊本上水道発祥の地八景水谷公園

スポンサーリンク
上水道


熊本の重要な水源地、八景水谷

熊本県熊本市北区にある八景水谷公園は、湧水地である「八景水谷水源」を中心にした公園です。八景水谷水源は阿蘇山や周辺の外輪山などに降った雨水が巨大な地下プールを通って、地上に湧き出た水で、全長22,69mの坪井川の水源の一つになっています。また良質な水が比較的容易に手に入るため、熊本市の上水道最初の水源地になりました。現在も主要な水源地の一つとして人々の暮らしに欠かせない存在となっています。清らかな湧水地は、水生生物や、野鳥を観察することができ、緑に覆われた水辺を歩くと、心地よい清涼感を感じます。今回は、水の都と呼ばれる熊本の重要な水源地であり、人々の憩いの空間である八景水谷公園について調べていきます。

八景水谷公園の湧水池

水資源に恵まれた熊本

熊本市は人口74万人を抱える全国有数の政令都市にもかかわらず、水源のすべてを地下水でまかなっているという水資源に恵まれた市です。世界の人口50万人以上の都市で、上水道の水源が地下水のみなのは、熊本市だけといわれています。市内各所に八景水谷のような湧水があり、水の都と呼ばれている熊本市。東方にある阿蘇山や周辺の外輪山の山々に降り注いだ雨は、地下の巨大なプール状になっている箇所に浸透し、約20年かけて地表に出てきます。長い年月をかけて地下を通ってきた水は特級水と評されるほど良質で、お茶やコーヒー、炊飯などに使うと水の素晴らしさが分かります。「蛇口をひねればミネラルウォーター」という表現を、よく見たり聞いたりする熊本市。世界一の地下水都市とも言われている熊本市にいると、阿蘇の大自然の懐の深さを、生活用水を利用することでも感じます。

八景水谷公園にある加藤清正像

熊本の水資源開発に功績のあった加藤清正

八景水谷公園内には加藤清正像があります。加藤清正は八景水谷と直接関係ありませんが、新田開発によって熊本の水資源を、より豊かにさせた功績のある人物です。熊本地域は阿蘇山の噴火によって水を地下に通しやすい土壌になっているのですが、加藤清正はその地下に通しやすい地域を新田開発しました。田が増えることによって水を張る地域、つまり涵養地が増えることにつながり、熊本の湧水地の水量を増やすことに大きく貢献しました。現在でも豊富な水資源を保つために、作物を作らない田畑でも水を張って涵養している土地を見かけることができます。

緑に覆われた遊水池

八景水谷に茶室が作られる

江戸時代になると、加藤氏に代わって細川氏が熊本を治めることになりました。第5代藩主細川綱利が良質な水源のあるこの地を深く気に入り、湧水で点てたお茶を楽しむために茶室を作りました。八景水谷の地名は、谷水が出る「吐け」という地名に、茶室から眺めた八つの景色を中国の中国の瀟湖八景になぞらえて詩を読んだことに由来します。茶室が建てられた後に池泉回遊式庭園として整備され、西にある山を借景にした趣のある景観の公園となりました。現在は市民の憩いの場所として親しまれています。

熊本市の上水道発祥の地、八景水谷

明治時代になると、全国的に水道事業が推し進められるようになり、熊本にも水道整備が計画されます。上水道の水源地として水前寺と八景水谷が候補になり、最終的に八景水谷が選ばれました。しかし農業用水の枯渇や、水道建設に伴う増税を危惧する住民が、反対運動を起こします。住民の説得に期間がかかり、建設は難航しましたが、大正13年に八景水谷を水源地とする熊本最初の上水道が完成します。旧八景水谷水源地第二送水ポンプ室は、上水道が完成した大正13年から昭和42年までの43年間、八景水谷水源地から立田山配水池へ送水するためのポンプ室として使用されていました。ポンプ室としての役割を終えた現在も「水道記念館」として現存しています。レンガとモルタルを組み合わせた大正時代の建築様式で、文化庁の登録有形文化財に登録されています。現在は水源を21か所持ち、市民に良質な地下水を100%供給している熊本市。八景水谷水源は熊本市の上水道創設当時、井戸を掘って市内4617戸に良質な水を安定供給しました。ダムや地上の河川に頼らず、地下水を使う水道供給スタイルを実現した八景水谷は、厚生労働省の「近代水道百選」に選ばれています。熊本市の上水道発祥の地、八景水谷は、規模の大きさでは世界に類を見ない、地下水を水源とした上水道システムの礎となりました。

八景水谷公園で、自然の恵みに触れてみましょう

透明度が高くてコンコンと清らかな水が湧き出ている八景水谷公園。子供の膝下くらいの浅めの池もあり、夏になると池の中で水遊びしている光景を目にします。池にはたくさんの水生生物や野鳥が生息しており、清らかな水が育む豊かな生態系を観察することができます。水生生物や野鳥の様子を写真に収めようとしたり、絵にしてみようとして多くの人々が八景水谷公園を訪れ、数々の作品を生み出しています。八景水谷公園内には水の科学館があり、熊本の地下水と水道を中心にした展示物や資料、図書があります。建物の中池と周囲に小さな子供も水に触れ合うことのできる浅い池があり、夏の暑い日になると、親子連れで賑わいます。春には八景水谷公園内のソメイヨシノ約200本が一斉に開き、清らかな水の公園が桜色になります。湧水量が豊富で岩から水が染み出ている八景水谷公園。阿蘇山の大噴火がもたらした自然の恵みに感謝しながら、豊かな水資源を守っていく必要を感じました。みなさんも八景水谷を訪れてみて、湧水の清らかさに触れてみてはいかがでしょうか。

コメント

タイトルとURLをコピーしました