自然と食が豊かな温泉情緒あふれる小浜温泉
長崎県雲仙市小浜町にある小浜温泉は、橘湾に面した情緒あふれる温泉です。約30ヵ所の源泉から高温の湯が湧き出ており、温泉街のいたるところに湯煙が立ち上っています。海と山に囲まれ、海辺に沿って伸びるように広がる小浜温泉。雄大な橘湾を望むことができる大通り沿いには、約20軒のホテルや旅館が建ち並び、九州有数の温泉地の様相を見せています。しかし一本路地裏に行けば、古くからの石垣が残り、落ち着いた風情のある町並みが広がります。食に関して言えば、小浜温泉のある島原半島は、近海でとれる魚介類が豊富であり、また農業が盛んな地域でもあります。小浜温泉の宿泊施設や料理店では、新鮮な海の幸、山の幸を味わうことができます。近年では小浜ちゃんぽんなど、名物料理を生み出そうとする取り組みも積極的に行っている小浜温泉。今回はそんな小浜温泉の魅力について迫り、一つ一つ確認していきます。
湯治場として多くの人から支持される小浜温泉
小浜温泉は奈良時代の風土記によると、西暦713年の開湯と伝えられており、古くから人々に親しまれていました。江戸時代になると当時の中国を統治していた明王朝から渡来した陳名徳が、小浜温泉を訪れます。禅僧であり漢方医であった陳名徳は、小浜温泉の医療効果を広く伝えたことから、世間に知れ渡るようになり、湯治場として多くの人々が訪れるようになりました。塩気が強く、保温効果が高いナトリウム塩化物泉の小浜温泉は、現在でも多くの人々から湯治場としての支持を集めています。また、多くの歌人が小浜温泉を訪れ、作品を残してたことから、人々に与える温泉情緒と小浜温泉の認知度をさらに高めることになりました。
観光の拠点として発展する小浜温泉
大正時代に温泉鉄道が開業すると、小浜温泉を訪れる観光客は増加します。野鳥やミヤマキリシマなどの自然の宝庫で、日本初の国定公園に指定された雲仙温泉とその登山口にあたり橘湾の美しい景観が望める小浜温泉は、「山の雲仙、海の小浜」と呼ばれ、一大リゾート地として発展していきます。戦後の高度経済成長期には、九州観光の拠点として、小浜温泉の温泉街は発展していきます。そして平成22年には小浜温泉の新名所として、日本一長い足湯が完成します。小浜温泉の最高泉温が、105度となっていることにちなみ建設した足湯は、105mもの長さを誇り日本一の長さを有しています。腰掛け足湯のほかに、ウォーキング足湯、ペット足湯もあり、橘湾の絶景を堪能しながら、足湯を楽しむことができます。
海側の埋め立て工事で出来た温泉街と残った古い町並み
海岸線の大通り沿いにホテルや旅館などが建ち並び、賑やかな温泉街を作り出している小浜温泉。そんな観光地化された姿を見せる温泉街ですが、橘湾を望む眺望の良い大通りを抜けだし、一本路地裏に入れば、昔ながらの風情ある町並みが広がります。江戸時代の小浜温泉は、この昔ながらの町並みが本通りで、賑やかな温泉街のある場所は浜辺か海でした。明治28年に行った埋め立て工事で、かつて浜辺か海だったところに近代的な温泉街が作られました。大規模な埋め立て工事の結果、残念ながら砂浜で温泉を楽しめる浜湯はなくなりましたが、江戸時代の雰囲気が残る町並みは、再開発されることなく現在にその姿をとどめています。味わいのある小浜温泉の古い町並みと、埋め立て工事に大きく貢献した本多湯太夫のことについては、別の機会に詳しく記述させていただきたいと思います。
小浜温泉の豊かな食材と小浜ちゃんぽん
温泉だけでなく、周辺の豊かな海の幸、山の幸で訪れる人の味覚を堪能させてくれる小浜温泉。様々な料理や、調理方法がありますが、小浜温泉の高温源泉の蒸気で、新鮮な食材を蒸した蒸し料理は格別です。近年では小浜の豊かな食材を使った小浜ちゃんぽんが、有名になっています。今から約100年前に、湯治客で賑わっていた小浜温泉に長崎からちゃんぽんが伝わったとされています。小浜温泉を訪れる観光客に、長崎の人気料理であったちゃんぽんが飲食店のメニューとして出されるようになりました。そして小浜でもちゃんぽんは人気を集め、飲食店にとってなくてはならないメニューとなりました。
多くの人々から愛される小浜ちゃんぽん
小浜ちゃんぽんに明確な定義はありませんが、もっちりとした太めの麺に、豚骨や鶏ガラ、そしてカタクチイワシや小えびなど魚介類の出汁がきいたあっさりとしながらコクのあるスープ、また、魚介類がふんだんに入っていることなども特徴として挙げられます。店によってスープのとり方などは異なりますが、小浜温泉で独自の進化を遂げたちゃんぽんは、高齢者でもすっと胃袋に入るような体にやさしいちゃんぽんに仕上がっています。小浜ちゃんぽんは、多くの人々から愛される名物料理です。
小浜温泉を訪れてみて、魅力を発見してみましょう
橘湾を西に望む小浜温泉は、夕日の美しい場所でもあります。夕日が水平線を黄金色に染めながら、大海原に沈む様子を間近に見ることができます。思わず溜め息が出るほどの美しさがあり、沈む夕日を眺めようと日没の時間に訪れる観光客もいます。古くから湯治場として有名な小浜温泉は、海岸の埋め立て工事を経て、近代的な観光地に生まれ変わりました。小浜温泉には、地元の年配者から修学旅行の学生まで、幅広い人々を受け入れるキャパシティがあります。そして環境問題が叫ばれている現在、高い泉温をもつ源泉が豊富にある小浜温泉のポテンシャルを生かして、発電事業にも乗り出しています。一つ一つ小浜温泉の魅力を見てきましたが、豊かな泉源を持つ小浜温泉が、それに甘んじることなく、時代や消費者のニーズにうまく応えてきたきたことがよくわかりました。みなさんも小浜温泉を訪れてみて、小浜温泉の魅力を発見してみてはいかかでしょうか。
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