大川内山の音の楽しみを確かめ、やすらぎを感じる大川内山風鈴まつり

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伊万里市


大川内山の夏の風物詩、大川内山風鈴まつり

佐賀県伊万里市にある大川内山は、伊万里焼の窯元が集まる焼き物の里です。江戸時代、佐賀鍋島藩の御用窯が置かれ、朝廷や将軍家、諸大名などへ献上する高品位な焼き物が焼かれていた歴史のある場所で、秘窯の里とも呼ばれています。そんな大川内山の夏の風物詩となっているのが、毎年6月中旬から8月下旬の長期にわたって開催される大川内山風鈴まつりです。期間中は各窯元の軒下に、たくさんの伊万里焼の風鈴が吊り下げられ、ガラスの風鈴とは違った味わいの音色を奏でます。山に囲まれた自然豊かな焼き物の里大川内は、陶器などを目で楽しむことはもちろん、陶器の音色や、周辺の川の音など音で楽しめる情緒もたくさんあります。今回は、大川内山風鈴まつりに触れながら、大川内山の魅力である音の楽しみがどんなものであるのか、確認してみましょう。

江戸時代からの技術「めおとし」と「唐臼小屋」の音

大川内山は、佐賀鍋島藩の御用窯があった為、外部に高度な陶工技術が流出しないように、江戸時代は関所が設けられ、大川内山への出入りは管理されていました。かつて陶工たちの行動制限をしていた関所跡を通り、陶工橋を渡ると眼前に、風鈴の焼き物が並んでいる「めおとしの塔」と陶石を砕くために水力を利用した大型の臼が並んでいる「唐臼小屋」があります。陶工橋に備え付けられているセンサーが橋を通行する人を感知すると、IC回路の機能が働いてめおとしの塔の風鈴の焼き物が音を出す仕掛けになっています。大型の白磁で出来た風鈴が奏でる洗練された音は、耳に優しい優雅な響きがします。「めおとし」とは、江戸時代から焼き物を叩いてその音色で選別する技です。隣にある「唐臼小屋」からは陶石を砕く音が小気味よく聞こえ、江戸時代からの伝統がある「めおとし」の音との共演は、秘窯の里「大川内山」の風情をより強く感じます。

風鈴と大川内山

多種多様な作品を生み出す大川内山の窯元

佐賀鍋島藩の御用窯であった大川内山でしたが、明治の新しい世を迎えると、藩の仕事としての窯業がなくなります。明治4年の藩窯解散以後は、これまで培ってきた高度な技法を守りながらも、新しい技術を取り入れた焼き物が、伊万里焼の主流となっています。現代の伊万里焼は伝統様式の作品から、現代の生活感覚にマッチした焼き物まで、多種多様なものを世の中に送り出している大川内山で開催される大川内山風鈴まつり。軒先には各窯元の技術の粋を集めた風鈴が吊るされ、吹き抜ける風が心地よい音を奏でます。また、夏らしい水に関するデザインの風鈴なども見受けられ、涼しさを演出しています。

一つ一つに味わいのある風鈴

人々に心地よい音色を提供している伊万里焼の風鈴。伊万里焼が培ってきた様々な技術を駆使して、新たなる音色の創出を積み重ねて来ました。各窯元は技法を凝らしてこだわりのある風鈴を作っています。高い音を出すために限界まで薄く削ったり、透かし彫りを入れたりして独特な音色になった風鈴も多く見られます。そして焼き物の釉薬によって音色が微妙に違ってきますし、焼成温度など、諸条件によっても音色が変わります。職人が一つ一つ手作りで作られた風鈴は、それぞれが機微に富んだ味わいあるものに仕上がっています。

自然の音と調和する大川内山の風鈴

大川内山は三方を山で囲まれており、狭い谷間に窯元などが立ち並ぶ陶芸の里を形成しています。周囲の山々は急峻であり、奇岩と窯業の煙が、大川内山ならではの景色を見せてくれます。特に雨上がりの霧の中に見る景色は、山水画の世界そのものであり、強く胸を打つものがあります。また周辺の草木や花が、伊万里焼の作品に描かれている場合もあるので、探しながら大川内山を散策してみるのも良いでしょう。大川内山周辺の小川は急な勾配を下っているため、水が勢いよく流れています。窯元めぐりをしていると水の音がかすかに聞こえ、水清き陶芸の里の風情を醸し出しています。風鈴の澄んだ音色の合間に聴こえる水の音、そして虫の音やたまに聞こえる鳥の囀りは、涼感を増し、夏の大川内山を感じとることができます。

大川内山の違う魅力を感じるイベント

毎年6月中旬から8月下旬までの長期間にわたる大川内山風鈴まつりは、期間中数々のイベントが開催されます。磁器のお碗を木琴のように叩いて音を出す「碗琴コンサート」は、透き通る音色が観客を魅了します。7月中旬に行われる「ボシ灯ろうまつり」は、本窯を焚くときに焼き物を入れる耐火性の器である「ボシ」を灯ろうに見立てライトアップされます。風鈴の音色と川のせせらぎの聞こえる大川内山一帯が幻想的な明かりに照らされ、いつもとは違った風情を感じとることができます。

大川内山の音の美を確かめてみましょう

伊万里市街地から車を使うと、約10分で行ける大川内山は、三方を山に囲まれ、陶芸をするにはふさわしい自然環境が整った場所です。1675年に佐賀鍋島藩が有田から御用窯を移して以来、技術の粋を極めた伊万里焼の作品を生み出し、人々を魅了し続けてきました。そんな伊万里焼の里大川内山で、夏に開催される大川内山風鈴まつりは、伊万里焼の持っている音の美を認識させられるイベントです。職人が丹精込めて作った無二の風鈴に耳を傾けると、涼感と共にやすらぎを覚える味わいがあります。さらに耳を澄ますと水の音や虫の音、鳥の囀りが聞こえる陶芸の里。たくさんの情緒を与えてくれる音が、焼き物や風景などの視覚だけでなく聴覚でも楽しめることを再認識させてくれます。みなさんも大川内山風鈴まつりを訪れてみて、音の美しさを確かめてみてはいかがでしょうか。

 

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