海と空と陸のコントラストと水田の絶妙な輪郭、訪れるたびに心和む土谷棚田

スポンサーリンク
土谷棚田


先人が切り開いた風光明媚な土谷棚田

九州北西部の伊万里湾に浮かぶ福島にある長崎県松浦市の土谷棚田は、玄界灘に面した斜面を開墾した約400枚の水田が連なる耕作地帯です。海面近くから標高120mの高さまで、平均傾斜角15度で競り上がる棚田は、青い玄界灘、大空と緑の棚田は鮮やかなコントラストをなし、見る人の心を和ませます。棚田を守る人々の営みにより、春は田植え、夏は黄金色になった稲穂、秋は夕焼け、冬に雪が降ると、一面の雪景色を見られる場合もあり、四季を通じて様々な表情を楽しむことができます。農林水産省の「日本の棚田百選」に選定された土谷棚田。先人が傾斜地を有効活用しようと開墾した棚田は、現在は風光明媚な景勝地として多くの観光客を招き、雄大な自然と太陽の恵みを受けた棚田米を食べたいという人々が増えた結果、「土谷棚田米」というブランドを確立するまでに至りました。今回は棚田のある福島に触れながら、土谷棚田について掘り下げていきます。

福島と周辺の美しい島々

 

土谷棚田のある福島は長崎県に属していますが、陸路で九州本土から福島へ行くのであれば、いったん佐賀県伊万里市に入ってから、長さ225mの福島大橋を渡って上陸するルートになります。福島は、通称「ツバキ島」と呼ばれ、約5万本のツバキが自生する美しい島です。島内の桜の名所として知られる大山公園にある高台は、福島周辺に浮かぶ美しい島々の景観を展望することができます。これらの島々はイロハの48文字ほど多いことから通称「いろは島」と呼ばれています。いろは島や輝く海で構成する美しい風景を展望できる大山公園を、訪れてみてはいかがでしょうか。

ビワと土谷棚田

農業・漁業が主な産業の福島

福島は、明治中期から炭鉱の開発が始まり、昭和47年の閉山まで炭鉱で栄えましたが、現在は人口3,600人、農業・漁業が島の中心の産業となっています。漁業はエビ底曳網漁が特に多く、いわし網漁、かご漁、一本釣りなどがあります。また波静かな福島の自然の入り江を生かしたエビ養殖も盛んで、全国へ出荷しています。福島の農業は平坦地が少ないため、山間・丘陵地の地形を生かした黒毛和牛の畜産やイチゴの栽培、そして土谷棚田のように、斜面を開墾した棚田での稲作が行われています。

土谷棚田の石垣

棚田の開発で稲作が始まる

福島は江戸時代までは細々と農漁業を営む寒村でしたが、明治時代になると炭鉱や、地域の特性を生かした漁業、そして棚田と、産業開発が進みました。明治から昭和初期の日本は慢性的な食糧難に悩まされていて、米の増産は喫緊の課題でした。そういう時代背景もあって、かつて秘境と呼ばれた福島の未開の地の開墾が始まります。現在の土谷棚田は、福島の西側、玄界灘に向かって広がる約15haの斜面を開墾したところです。森林に覆われた斜面を切り開き、約400枚にわたる棚田を形成しました。自然の傾斜に高さ5mの石垣と輪郭を組み合わせることで、約4haの水田を確保することができました。平坦地が少なく稲作に適さない福島の地に、棚田が開発されたことで稲作が始まります。明治中期から昭和中期の福島は、炭鉱に加えて農業・漁業の開発が進んだ裕福な島になりました。

土谷棚田に水が張る田植え時期

空と海、そして田んぼが絶妙な風景として広がる土谷棚田。その風景は、プロ・アマ問わずカメラマンを虜にします。カメラマンが伝える棚田の作品一つ一つが、土谷棚田の魅力を高めていくことにつながったと言っても過言ではありません。そんなたくさんの棚田の表情を切り取ってきたカメラマンの多くが一番良い時期と答えるのが、4月下旬から5月上旬の田植えの時期です。太陽の位置、水を張った田んぼの状態がベストコンディションだそうで、たくさんのカメラマンでごった返します。約400枚の水を張った曲線の輪郭のある棚田が重なり、海へと続きます。そして水を張っていない場所が大飛島・小飛島のように映り、土谷棚田が夕陽に染まる風景は筆舌に尽くしがたいものがあります。

幻想的な風景の棚田火祭り

9月に行われる土谷棚田火祭りは、棚田の畦に約3000本の灯籠に火が灯り、幻想的な風景が展開されます。2003年に地元の方々が、地域の活性化につなげたいという思いから漁火にヒントを得て始めた土谷棚田の火祭りは、2012年に「日本夜景遺産」に認定されていました。背景の暗い海とのコントラストが美しく、赤く燃える火は、何か魂が宿ったかのような原始的な心証を感じる土谷棚田の火祭り。祭りの当日は、大勢の見物客の他に、火祭りの幻想的な画像を収めとろうと大勢のカメラマンが訪れます。

土谷棚田の見せる様々な表情

未開の地を開墾し、現在では「日本棚田百選」の中でも指折りの棚田との呼び声も高い土谷棚田。海岸線から標高120mまで田んぼが段々と続き、平均勾配が1/4もある急峻な棚田です。海に面した棚田は、臨海型棚田と言いますが、日本と韓国の一部にしか見られない棚田だそうです。水を張った棚田と海と空が溶け込む春の風景は、土谷棚田独特の美を感じます。秋は稲刈りの季節で、稲を刈った後の匂いが海に面した急峻な棚田じゅうに漂い、秋の季節独特の情緒が感じられます。四季を通じて様々な表情を見せる土谷棚田。みなさんも訪れてみて、棚田のいろな表情を確かめてみてはいかがでしょうか。

海と棚田

コメント

タイトルとURLをコピーしました