日本の長大橋建設の原点、西海橋

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アーチ橋
右奥:西海橋 左手前:新西海橋

東洋一の規模を誇った西海橋

西海橋は、長崎県佐世保市針尾島と西海市西彼町の間にかかる針尾瀬戸にかかるアーチ橋として昭和30年に完成しました。完成した当時は、東洋一そして世界第三位の規模を誇り、最先端の技術を結集させた橋となりました。西海橋建設で培った架橋技術は、後の関門橋や瀬戸大橋の建設にも生かされ、世界最大級の規模を実現する我が国の戦後最大の出発点として「技術的に優秀なもの」「歴史的価値の高いもの」として令和2年12月には国指定文化財に指定されました。平成18年には、新西海橋が開通し、2つの橋で地元の交通を支えることなりました。今回は西海橋について掘り下げていきます。

急流とうずの針尾瀬戸を突っ走る小型ボート

住民からの架橋の要望が高まる

西海橋が架かる針尾瀬戸は、四方を陸地に囲まれた大村湾と外洋の東シナ海がつながっている海峡です。大村湾と外洋の潮の落差によって、急流とたくさんのうず潮が発生します。西海橋が完成する前の針尾瀬戸の交通手段は船舶でしたが、急流やうず潮がある海峡の航行は難易度が高く、また危険が伴いました。そのため住民から針尾瀬戸に橋を架けてほしいとの要望が強まり、昭和25年に橋の建設に取り掛かります。まだ戦後間もない頃だったこともあり、資材不足に悩まされながらも、昭和30年に完成しました。

日本初の海峡横断橋の西海橋

観光名所となった西海橋

日本で初めて海峡横断橋として開通した西海橋。アーチの上に道路がある橋で、鋼上路ブレースド・リブアーチという構造形式で、全長316m、海からの高さは、およそ42mあります。針尾瀬戸のうず潮の上に掛けられた長大橋は、開通当初から観光名所として賑わい、観光振興や地域振興に大きく貢献しました。

現在も幹線道路の役割を担う西海橋

幹線道路としての役割が強まる

西海橋の完成当初は、橋の建設費用の債務を返済するために通行料を取っていました。観光や地域間の交通需要が西海橋には多くあり、高度経済成長による後押しもあって、通行料収入による債務返済は順調な推移を維持していきます。そして完成から15年後の昭和45年には全額償還を果たし、通行料が無料になりました。無料となった後は、長崎県北部と南部を結ぶ幹線道路としての役割が強くなり、西海橋の通行量は、増加しました。

右側:新西海橋 左側:西海橋

新西海橋建設へ

西海橋はモータリゼーションの影響もあって、通行量は年々増加していき、橋を通る国道202号線は、慢性的な渋滞に悩まされることになりました。そのため国道202号線の渋滞のボトルネックとなっている西海橋のバイパスルートとして、新西海橋が建設されることになりました。

鋼中路ブレーズド・リブアーチと呼ばれる構造の新西海橋

高規格道路に対応しうる構造

平成18年に完成した新西海橋は、鋼中路ブレーズド・リブアーチと呼ばれる構造で、アーチのの中間に道路がある独特の美しいアーチ線形を描いた橋です。全長620mで、幅員が20.2mあり、4車線の高規格道路として供用されました。国道202号線のバイパスルートとして、長崎県佐世保市と西海市を結ぶ「西海パールライン」として開通し、新西海橋を含む一部区間が有料となっています。新西海橋が完成したことで、観光名所としての魅力が高まり、交通量が増加した幹線道路の需要に対応しうるインフラが誕生しました。

新西海橋の自動車専用道路の下にある歩道

新西海橋の歩道で、うず潮見学

「西海パールライン」は自動車専用道路ですが、新西海橋の自動車専用の道路の下に歩道が架設されています。歩道の中心部分には、床に四つのガラス張りの窓が設けられ、新西海橋の高さを感じながら、うず潮や潮の流れを観察できます。大村湾の海水が干潮のときに、見る潮の様子は壮観で、特に春と秋の大潮は、大村湾と外洋の落差が大きくなり、旧暦3月3日の大潮によって生まれるうず潮は「節句潮」と呼ばれています。その頃の西海橋公園は、公園の桜の季節と重なることもあり、訪れる人の目を楽しませます。

西海橋の歩道から見た眺め

回遊性のある散策ルート

新西海橋の歩道を渡って、帰りは西海橋の道路脇の歩道を歩くというふうに、歩いて周回することができます。周回コースには西海橋や新西海橋、針尾瀬戸はもちろん、弁天島や針尾送信所の電波塔を望むことができます。西海橋の佐世保市側、西海市側の両方にまたがって西海橋公園があり、佐世保市側には真下から西海橋を見上げ、潮の流れを真近で見ることができる潮見公園があるので、散策してみるとよいでしょう。

新西海橋の骨組みと西海橋

二つのアーチ橋を見学してみましょう

西海橋と新西海橋の二つのアーチ橋。どちらも美しい橋ですが、とても対照的な橋です。西海橋は、戦後の資材不足に悩まされていたこともあり新西海橋に比べると華奢な造りです。一方の新西海橋は筋骨隆々のたくましい造りとなったいるのですが、どちらも強度には十分に配慮した設計となっています。西海橋の設計は、少ない鋼材で、いかに強度とデザインの美しさを両立させるかがテーマでした。西海橋で得た実績は後の海上に架けられる長大橋の建設に生かされ、平成18年に完成した新西海橋にも生かされています。皆さんも西海橋に訪れてみて、針尾瀬戸の美しい風景を楽しみ、機能美に富んだ西海橋を見学してみてはいかがでしょうか。

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