玖島城跡の大村公園に、気品ある生命力をみせる花菖蒲

スポンサーリンク
大村公園

城跡の気品ある花菖蒲の風情ある風景

長崎県大村市にある大村公園には、九州最大規模の花菖蒲園があり、菖蒲の花が咲く時期には「花菖蒲まつり」が開催されます。約30万本の花菖蒲が鮮やかに公園を彩る「花菖蒲まつり」の期間中は、23時までライトアップされ、訪れた人を幻想の世界へ誘います。大村公園は、江戸時代の大村藩主の居城であった玖島城の城跡にあり、「花菖蒲まつり」会場の板敷櫓下に広がるお堀跡には、優雅で気品のある花菖蒲と城跡の石垣が見事に調和し、風情ある風景が広がります。大村公園は、優れた歴史的・文化的資源を有し、地域の活性化に貢献しているとして国土交通省の関連団体から『日本の歴史公園100選』の地に選定された公園です。今回は大村公園の花菖蒲を中心に、大村公園と玖島城の歴史についても触れていきます。

色とりどりの花菖蒲

一株一株違う表情を見せる花菖蒲

大村公園の菖蒲園は、玖島城の東側の堀「長堀」と南側の堀「南堀」であったところにあり、5月中旬になると30万本近くの花菖蒲が埋め尽くします。菖蒲園の面積は約9,500平方メートルあり、江戸系110種、肥後系48種、伊勢系13種の合計171種の花菖蒲が生育しています。色とりどりの花々が咲き誇っている風景は圧巻で、訪れた人々を魅了します。大きな特徴としては、肥後系は花が大きく見応えがあり、江戸系は、外花被が横水平に広がり、高い所から見下ろした時の美しさがあります。伊勢系は、外花被が3枚の三英花でちりめん状に下に垂れている特徴があります。自生している野花菖蒲を人間の手によって改良された花菖蒲は、青、青紫、白、ピンク、黄色と様々で、一株一株違う表情を見せています。

大村公園(玖島城跡)から見る大村湾

初代大村藩主が築城した玖島城

江戸時代は、この地を治める大村藩の藩庁があった玖島城。現在は大村公園として、人々の憩いの場となっています。城の石垣は当時のまま残っており、その他にも多くの史跡を残しています。菖蒲園のある場所もお堀の跡だけあってたくさんの石垣があり、花菖蒲の味わいをさらに深いものにしています。大村家当主で初代大村藩主になった大村善前は、海上交通を重視した結果、大村湾に突出した半島になっているこの地を本拠と定め、玖島城を築城しました。

玖島城跡に張り巡らされた堅い防御の石垣

築城に造詣深い加藤清正の助言を受ける

当時、城の建設に造詣が深かった戦国武将の加藤清正の助言を受けて築城した玖島城は、三方を海に囲まれた天然の要害を十分に生かした平山城となりました。そして陸地と接する部分は空堀となっており、深さ6~7m、幅18mで、一部水が溜まって沼のようになっています。その土地の特徴を生かして防御に利する加藤清正の思想の詰まったような空堀ですが、このような沼のような状態は、菖蒲の生育に適した環境でもありました。

美と優れた防御性を備えた板敷櫓

軍事の防御力と美を兼ね備えた板敷櫓

この辺りの地名が由来の板敷櫓は、加藤清正の城づくりのノウハウが生かされていると言われています。武者が登ることが困難な櫓台の扇勾配、石垣や櫓に実用性と同時に美を感じるところなど、加藤清正が築いた天下の名城熊本城とダブるところは少なくありません。平成4年に再建され、現在は大村公園のランドマーク的な存在となっている板敷櫓。櫓からは、大村湾を高所から望むことができます。カラフルな菖蒲と白黒の石垣と櫓が織りなす景観は、美しさがあります。

武家の名門大村氏を祀る大村神社

江戸時代の大村藩の本拠であった玖島城は、明治の廃藩置県までの約270年間、大村藩の本拠地でした。しかし明治4年に廃藩置県となると、玖島城は廃城となり城跡は荒廃します。この状況を憂いた旧大村藩士は、池田山に建立していた大村氏の御霊宮を明治17年、玖島城の本丸跡に遷座させ、社名も「大村神社」に改称しました。大村神社は、大村家歴代の当主と、大村氏の祖と崇める藤原純友とその親族を祀っています。鎌倉時代からご当地を治めた武家の名門大村氏を祀ることもあり、現在でもお宮参りや七五三など、節目の祈祷に訪れる人も多く見られます。

桜と花菖蒲の名所大村公園

大村神社の境内は桜の名所としても知られ、昭和16年には、サトザクラの突然変異種オオムラザクラ、昭和22年にはクシマザクラが発見されています。大村公園一面に咲くソメイヨシノ、ソメイヨシノよりも遅い時期に咲くオオムラザクラは、それぞれに味わいがあります。そして昭和30年には、社殿地を大村家から寄進され、市の管理する大村公園として歩を進めることになります。昭和35年からは花菖蒲を植え始め、既存の桜と並ぶ大村公園の名所となりました。

桜や花菖蒲見物の楽しみ、梅が枝焼き

花菖蒲まつりでは、焼き鳥、焼きそばなどのB級グルメの屋台に加え、大村の名産品、そして大村市の姉妹都市である秋田県仙北市角館町の名産品も出店しており、露店巡りもひとつの楽しみです。そそれから大村公園といえば、梅ケ枝焼きも欠かせません。大村神社の本殿に向かう階段の途中にある明治14年創業の老舗料亭「梅ケ枝荘」は、桜や菖蒲の季節になると花見茶屋として訪問客をもてなします。江戸時代に、梅ケ枝荘の初代が大村藩の台所番として仕えていた頃、太宰府の梅ケ枝餅の製法を、本場太宰府に行って学び、持ち帰ったのが始まりとされています。餅の独特の食感に甘めの餡が印象的な梅ケ枝焼きは、梅ケ枝荘の花見茶屋の人気メニューです。

板敷櫓から菖蒲園を見る

花菖蒲を見て、初夏の大村公園を感じる

毎年5月下旬〜6月中旬に見頃を迎える大村公園の花菖蒲。風薫る5月から、梅雨の水滴で植物が美しく見える6月へと移り変わる初夏の時期であり、生命の勢いが増大する季節です。大村公園では同時期にサツキ、サルビアが咲き、花菖蒲とともに、この季節の花を観賞することができます。菖蒲は、尚武と同じ発音であることから、武士から好まれた花です。その菖蒲が、武家の名門である大村氏の本拠であった玖島城跡の大村公園で、たくましく生育されているというのは本当に感慨深いものですし、築城に知恵袋として関わった加藤清正も、草葉の陰で喜んでいるのではないでしょうか。初夏の力強い植物の生命力と、歴史的ロマンを感じる大村公園の花菖蒲。みなさんも訪れてみてはいかがでしょうか。

コメント

タイトルとURLをコピーしました