比較的歴史の浅いレアな鍾乳洞、海底隆起した地層と多様な奥深さを見せる七ツ釜鍾乳洞

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七ツ釜鍾乳洞

 

たくさんの見どころがある七ツ釜鍾乳洞

長崎県西海市にある七ツ釜鍾乳洞は、昭和3年に七釜尋常小学校の校長をはじめとする職員たちの数回の調査で発見された鍾乳洞です。昭和11年に天然記念物に指定された七ッ釜鍾乳洞は総延長1600mあり、そのうちの約260mが観光コースとして整備されています。クボタノコギリヤスデなどの珍しい洞窟生物や石筍、大石柱、親子地蔵などと名付けられる特徴のある形状、海藻から出来た化石などたくさんの見どころがある七ツ釜鍾乳洞。洞窟内の気温は1年を通じて14〜16度前後で、夏は涼しさを、冬は暖かさを感じることが出来ます。今回は長崎県内唯一の鍾乳洞である七ッ釜鍾乳洞について掘り下げていきます。

低くて狭い所も多い七ツ釜鍾乳洞

 

 

比較的に新しい生成年代の七ツ釜鍾乳洞

七ツ釜鍾乳洞の特徴として挙げられるのは、比較的新しく形成された石灰岩で出来ていることでしょう。日本にある大半の鍾乳洞は、およそ3億年前の石灰岩の中に出来たものですが、七ッ釜鍾乳洞のある場所はおよそ3千万年前に海底が隆起して陸地になった土地であり、その後石灰質を多量に含んだ藻類などの化石を含んだ石灰質砂岩が、水に侵食されて鍾乳洞が形成されました。材質と生成年代の新しさから、学術的にも貴重な鍾乳洞とされ、現在も調査が続いています。

清水洞の入口にある七ツ釜鍾乳洞の事務所

一部が観光コースとして整備された清水洞

七ツ釜鍾乳洞は地道な学術調査が続けられており現在、大小の35の洞穴が発見されています。その中で清水洞と呼ばれる鍾乳洞の一部が観光コースとなっています。観光コースの道中には、狭い場所や滑る所もありますので、動きやすい服装で十分な注意をしながら、散策して下さい。

鍾乳洞入口にあるナナツガママンネングサ

清水洞入口に咲くナナツガママンネングサ

清水洞の入口付近は、鍾乳洞からの空気が流れていて、夏は涼しく冬は暖かく感じることができます。池を見ながら腰を掛ける場所もありますので、ひと息ついて洞窟内の見学に臨むのも良さそうです。また5〜8月にかけて清水洞入口付近には、「ナナツガママンネングサ」が咲いています。日本では長崎県の石灰岩地の一部にしか自生しておらず、絶滅が危惧されている花だそうです。花弁は白く可憐で、全体に腺状毛が多く生え、柔らかくて繊細な感じのする花です。

 

鍾乳洞を形成した洞窟内の豊富な水

入口付近の狭い通路を通り抜けると安堵の瀬にたどり着き、澄んだ湧水が心地よい音を立てて流れています。そこからしばらく歩くと、清水洞の中でもっとも広い空間である新世界に出ます。ここでも洞窟を流れる水の音がこだましています。この洞内を流れる豊富な水が鍾乳洞を形成しました。七ツ釜鍾乳洞は海底から隆起した後に、長い年月をかけて少しずつ石灰質砂岩を水が浸食していきます。そのような現象の積み重ねの結果、澄んだ湧水の流れと清浄な空気に満ちた空間を作り出しました。

長い年月を経てできた鍾乳石

長い年月をかけて形成された鍾乳石

親子地蔵と呼ばれる鍾乳石は人の形に似ていて、その姿が大小のお地蔵様のように見えることから名付けられました。親子地蔵は天井から落ちた炭酸カルシウムを含んだ水滴が、長い年月をかけて降り積もり、現在の形になりました。1センチ成長するのに3〜500年かかると言われていますから、膨大な期間をかけて親子地蔵を形成したものと思われます。

七ツ釜鍾乳洞の断層

七ツ釜鍾乳洞に棲むコウモリ

七ッ釜鍾乳洞には、クボタノコギリヤスデなどの珍しい洞窟生物が約50種類生息しています。暗くて見つけにくいのですが、よく観察すると見つけることもあります。また、洞窟内にはコウモリがいて、飛んでいる様子を肉眼で確認することができます。コウモリは静かにしていないと現れませんので、なるべく少人数で訪れて静かな状態を作ることができれば、目撃する可能性が高まります。

七ツ釜鍾乳洞の大柱石

 

幻想的な世界を演出する大柱石

清水洞で一番大きな石柱である大柱石は、高さ4m、直径60cmあります。つらら状に下がる鍾乳洞と、炭酸カルシウムを含んだ水滴が降り積もってできた石筍が結合して現在の形となっています。自然が作り出した鍾乳石の彫刻美を洞窟内のライトが照らし出し、幻想的な世界を演出しています。大石柱からしばらく歩くと金明の滝があり、観光コースの出口となります。

 

地層を垣間見ることのできる遊歩道

清水洞の観光コースを出ると岩石・化石資料館があります。蛇紋岩や砂岩層化石、結晶質岩灰鍾乳石、中生代の鳥の巣石灰岩などがあります。帰りは、森林浴をしながら、地層を垣間見ることの出来る遊歩道を歩いて出発地点に戻ります。森林浴が出来る心地よい遊歩道を歩きながら、この付近の海底が隆起した約3500万年前のことに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

自然が造り出したものに圧倒される七ツ釜鍾乳洞

七ツ釜鍾乳洞は、日本国内にある他の鍾乳洞と比べて形成に費やした年月が浅いということもあって、石筍やつらら石などが派手ではないという特徴があるかと思われます。ただ海底が隆起して出来た断層には特異性があり、地層の隆起や浸食という自然が造り出したものには訪れる人々を圧倒させるものがあります。七ツ釜鍾乳洞の売店には、鍾乳洞にある豊富な湧き水から作った「名水らむね」が販売されています。購入して味わってみるのも良いでしょう。みなさんも七ツ釜鍾乳洞を訪れてみて、自然の営みが生み出した世界を体験してみてはいかがでしょうか。

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