300年の時を経て受け継がれた美しさが毎年春に花開く、幻想的な空間に魅了され地元の人々から愛されている中山大藤

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中山大藤

 

夢の中のような幻想的な世界を見せてくれる巨大な藤棚

福岡県柳川市にある中山大藤は、中山熊野神社にある巨大な藤棚です。樹齢300年といわれる大木が、約2千平方mの藤棚いっぱいに薄紫色の美しい花の房を下げます。例年の見頃となる4月中旬から4月下旬にかけて、多くの見物客が訪れます。藤の花独特の甘い匂いが鼻をくすぐり、1万5千房の花が広がる光景は、夢の中のような幻想的な世界を見せてくれます。また中山大藤の見頃に開催される「中山大藤まつり」の期間中は、日没後に藤棚が華やかにライトアップされ、日中とは違う藤の花の表情を見ることができます。今回は、約300年の歴史を継承しながら、たくさんの人々から親しまれる美しい藤へと発展させてきた中山大藤の魅力について迫っていきます。

空と、川と石橋に架かる藤

酒造業の万さん、野田藤を中山村に持ち帰る

中山大藤の由来は、江戸時代中期の享保年間に酒造業中山村で酒造業を営んでいた万さんと呼ばれる人物がいたそうです。万さんは上方見物をした折に、現在の大阪市福島区野田にある野田藤のあまりの見事さに心を奪われました。野田の藤に魅せられた万さんは、藤の実を持ち帰り、中山村にある自宅に植えたとされています。数十年後、四尺程度(約120㎝)の見事な花を咲かせるようになり、多くの見物客で賑わうようになりました。その後、酒に酔った武士が刀を抜き乱暴を働いた事件が起こったために、藤の木は中山熊野神社に移されました。現在は地元保存会の方が念入りに手入れをされており、毎年立派な藤の花を咲かせています。

近くから見ても見事な藤の花

野田藤の美しさを受け継いだ中山大藤

中山大藤の敷地内には、新5千円札の図柄との関連を紹介する案内板が設置されています。令和6年に日本円の紙幣が新しいデザインのものにものに切り替わりますが、その5千円札の裏が「藤の花」になっています。そのデザインに採用された藤が日本三大名藤の一つとされている大阪市の「野田藤」です。野田藤発祥の地の藤は、太平洋戦争の米軍による空襲や戦後の台風で失くなってしまったということですから、江戸時代に野田の藤を持ち帰り、その種子を植えられたとされる中山大藤は、野田藤の美しさを受け継いでいると言えると思います。

満開の藤棚

地元の保存会や関係者のたゆまぬ努力で、毎年花を咲かせる中山大藤

藤の花を毎年咲かせるのは容易ではなく、長年手入れしていてもなかなか咲かない藤も少なくありません。そのためより多くの藤を観察し、色々と研究するなどの地元の保存会や関係者によるたゆまない努力がなされています。藤棚の真ん中付近にある古い大木の木は、幹の太さと味わいのあるひねりから歴史を感じさせます。また日本一の大藤を目指していまも拡張しているといいますから、藤の木の生命力と育成に関わっている人々の情熱には圧倒されるばかりです。

 

藤のカーテンが見せる美しい光景

中山大藤は、メインの藤棚の周辺には藤のトンネルがあり見頃に行くと、藤が紫のカーテンのように綺麗に見え、辺り一帯にほのかな甘い香りが漂います。中山熊野神社の参道には小川に架かる石橋があって、ここにも藤のカーテンが掛かっています。藤の花の下にある石橋を渡りながら見る景色はとても素晴らしいものがあります。陽のあたる日中だと、岸壁を照らす木漏れ日と小川に架かる藤の花が、とても綺麗に見えます。そして藤のトンネルの先には、メインの藤棚が待ち受けています。藤が小川を越えた先まで架けられているなんて、なかなか見れない珍しい光景なのではないでしょうか。歴史ある神社や石橋などを通していろんな角度から、いろんな藤たちの表情を観賞できるところも、先人からの伝統を受け継いできた中山大藤の楽しみの一つです。

橋の下から見た藤のカーテン

重量級の藤の下で飲食が楽しめる中山大藤

中山大藤のメインの藤棚は、樹齢約300年の重量級の規模の大きな老木が控えています。この重量級の藤を支える藤棚は鉄骨でできています。見頃になるとこの頑丈な藤棚に、満開の藤が所狭しと咲き誇り、見物客の目を楽しませます。中山大藤には露店も多く出ていて、テイクアウトできる飲食物を販売しています。ご当地柳川名物のうなぎ料理を楽しめる露店もあり、「うな巻き」など手軽にうなぎ料理を味わえる商品も販売しています。藤棚の下にはイステーブルが置かれ、花の下で飲食できるようになっています。藤の花の下で食事をとったり、花見酒を楽しんだりすることができるのは、中山大藤ならではなのではないでしょうか。桜の花見のような雰囲気で、時間帯によっては歩くのも大変なくらいの人だかりになります。

 

江戸時代から地域とともに歩んできた中山大藤

藤棚の先にある中山熊野神社の社殿は、木々に囲まれた素朴な佇まいをしています。藤の見頃になるとたくさん藤の花の見物客が社殿にも訪れ、まるで初詣のような参拝待ちの行列ができます。素朴で自然を感じる神社に参拝して、優雅な藤を観賞するとなんだか心が洗われたような気がします。柳川市の花は藤の花であり、地元の方にとって中山大藤は、春の年中行事の一つのような存在になっています。藤の見頃にあわせて開催される「中山大藤まつり」は、物産販売、各種イベント、日没から22時までの間に藤棚のライトアップなどがあり、10万人を超える見物客で賑わいます。江戸時代から地域とともに歩んできた中山大藤。皆さんも中山大藤を訪れてみて、愛情込めて立派に成長した藤を観賞してみてはいかがでしょうか。

古風な石橋に彩りを添える藤

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