生月島の西側海岸を南北に貫く大規模な断崖、歩くと生月島の自然と歴史に心動かされる塩俵断崖と大バエ灯台

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塩俵の断崖

 

東シナ海の荒波に侵食された断崖が続く生月島西側の海岸

長崎県平戸市にある生月島は、平戸島の北西に位置する人口約6000人の島です。東シナ海の波風を直接受ける生月島の西側の海は、荒い波になり、特に冬場は北西風が激しい波浪を引き起こします。そのため生月島西側の海岸は荒い波に侵食され、長い年月を経て大バエや塩俵に代表されるような海食崖が形成されました。比較的波の穏やかな生月島の東側に人が住む集落が偏り、西側はあまり人がいません。そういこともあって生月島西側の海岸は、青く輝く東シナ海と太平洋の孤島を思わせるような緑豊かな断崖の絶景が続いています。今回は生月島西側の海岸にある大バエ灯台と塩俵断崖、断崖の上をハイキングすることができる生月島自然歩道に触れながら、生月島の断崖が続く西側海岸を掘り下げていきます。

荒波の浸食によって出来た断崖

波の侵食を受けやすい玄武岩を形成する生月島の地層

約1500万年前の生月島は、浅い海底にありました。海底に堆積した礫や砂、火山灰が岩となり平戸層群と呼ばれる地層が形成されていきます。その後平戸層が隆起して、しだいに陸地が形成されていきました。現在の生月島の地層は、堆積してできた平戸層を突き破るような形で溶岩でできた玄武岩が形成されています。玄武岩という事は、生月島の地層がまだ海底か、隆起して地上に表れた状態の時に噴火があったことが考えられます。こうして生月島の丘陵を形成した玄武岩は軟らかく荒波による侵食をうけやすい性質であったために、現在のような生月島西側の南北を貫く大規模な海食崖が出来上がりました。

柱状節理の塩俵の断崖

地質学的に貴重な柱状節理の塩俵の断崖

生月島の西側はほとんどが断崖ですが、中でもひときわ珍しい形をしているのが、塩俵の断崖です。塩俵の断崖の岩は柱状節理といい、溶岩台地の上に玄武岩が重なり、垂直方向に亀裂が入ることで出来ます。塩俵の断崖は地質学的に非常に貴重な地層のため、平成元年には長崎県の天然記念物に指定されています。波による侵食で柱がいくつもたっているように見える姿がより鮮明になり、荒波が打ち寄せる風景は厳しさを感じます。南北500m高さ20mの規模があり、長崎県新観光百景にも選ばれた塩俵の断崖は、景観に荘厳さがあります。

 

 

断崖のアップダウンを進み、ハイキングコース周辺の魅力を満喫できる生月島自然歩道

水平線の見える大海原と草原の景色が展開する御崎野営場

生月島の北端にあたる塩俵断崖と大バエ灯台の間に生月島自然歩道が整備されています。歩きやすいとは言い難い歩道ですが、そびえたつ断崖や美しく光る海、砲台跡、雄大な草原と牧場の牛などが見物でき、魅力的なハイキングコースとなっています。高さ20mの柱状節理の塩俵の断崖をスタートし、海岸沿いの急峻な断崖の上をアップダウンする山道を進んでいきます。しばらく歩くと水平線の見える大海原と丘陵の草原の景色が展開する御崎野営場に着きます。風景の良いこの場所でキャンプをするのも良さそうです。

牧場の公園の牧草地に放牧されている牛たち

廃墟となった砲台跡と牛たちが放牧された草原の牧場、遠くに崖の上の大バエ灯台を望む海岸沿いの山路

さらにアップダウンの道を進むと砲台跡に出会います。旧日本陸軍が対馬海峡の防備のために昭和13年に設置した砲台で、太平洋戦争後は放置され、廃墟となりました。経年により埋没しているところもありますが、見張所跡や倉庫跡は残っており、当時の面影を残す文化遺産となっています。砲台跡から木陰のアップダウンの道を進むと草原が広がり牧場の公園に面した道を進むことになります。牧草地には牛たちが放牧されており、運がよければ牛の群れが勇壮に走り回っている様子が見れるかもしれません。牧場の公園の先には断崖の上に立つゴールの大バエ灯台を見ることができます。片道約3kmの生月島自然歩道ですが、断崖の続く海岸線の魅力を味わうコースとなっています。

大バエ灯台(右)と沿岸波浪計(左)

旧日本陸軍の弾薬庫を改造した頑丈な造りの大バエ灯台

生月島の最北端に位置する大バエ灯台は、100mほど切り立つ大バエ断崖の上にあります。夕暮れ時には水平線に沈む夕陽に白亜色の灯台がオレンジ色に染められ美しい情景となります。大バエ灯台を含む生月島自然歩道の付近一帯は、太平洋戦争当時は、陸軍の要塞がありました。そのため大バエ灯台は当時の弾薬庫を改造して利用されています。二重構造の頑丈な室内に灯台の機器を設置し、塔上部のコンクリート80cmの壁をくり貫いて人が乗り降りできる鉄梯子を取り付けました。そのため大バエ灯台は、全国でも珍しく展望台のある灯台となりました。展望台からは360度の雄大な自然のパノラマが展開し、訪れた人を魅了します。大バエ灯台の横には、沿岸波浪計も設置されており、眼下にある大海原の波をレーダーで観測します。こうした観測記録をとおして、東シナ海を航行する船舶に安全な情報を提供しています。

 

探れば探るほど感慨深くなる生月島西側の海岸

平成3年に平戸島と生月島を結ぶ生月大橋が開通すると、平戸島を経由して九州本土と自動車での往来が可能となり、生月島を訪れる観光客が急増しました。平戸大橋か自動車で約45分到着できる塩俵断崖や大バエ灯台も急激に観光客が増加し、生月島西岸の断崖地帯をドライブできる生月サンセットウェイと合わせて、生月島の自然を認識する人も増えたのではないかと思います。生月島西側の海岸、特に塩俵断崖から大バエ灯台にかけての地区に焦点を当てていきましたが、掘り下げれば掘り下げるほど感慨深くなる場所ばかりでした。皆さんも塩俵断崖や大バエ灯台を訪れてみて、その素晴らしさに触れてみてはいかがでしょうか。

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