八幡大神となる応神天皇が御誕生されたとされる地、神功皇后が安産されたことに由来する篤い安産信仰が今も続く宇美八幡宮

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八幡信仰

八幡信仰と安産信仰の宇美八幡宮

福岡県宇美町にある宇美八幡宮は、神功皇后が三韓征伐から帰還の折、八幡宮の主祭神となられた応神天皇を出産したといわれる地に創建された神社です。神功皇后は、軽いお産で応神天皇をお産みになったとされており、そのいわれから宇美八幡宮には安産信仰が生まれました。宇美八幡宮の境内には神功皇后が出産された際につかまったとされる「子安の木」など安産に関する言い伝えが数多く残っています。今回は八幡信仰や安産信仰などで、様々な人々が参拝に訪れる宇美八幡宮に触れていきます。

宇美八幡宮の神門

三韓征伐から帰還した神功皇后が出産した地を「うみ(宇美)」と称す

仲哀天皇の皇后であった神功皇后は、仲哀天皇が病死した後に摂政となったと日本書紀では記されています。摂政になったばかりの神功皇后は、体に子を宿しているにも関わらず三韓征伐に乗りだし軍を率いて新羅に攻め込みました。戦いは長引き10ヶ月経過し、出産の時期も神功皇后は朝鮮にいました。そこで神功皇后は神術を使い出産を遅らせ、三韓征伐から帰還した15ヶ月後に筑紫の地にある蚊田で出産したと伝えられています。その後、産所となった蚊田が「うみ(宇美)」と称せられるようになり、御産所の四辺に八つの幡を立てて兵士に守らせたといういわれから、八幡大神と称する由縁となりました。出産を終えた神功皇后は応神天皇とともに大分の宮(現在の飯塚市にある大分八幡宮)へ向かいました。これから後のことは、いずれ取り上げるであろう大分八幡宮の回で掲載させて頂きます。宇美八幡宮は八幡宮の御祭神である応神天皇が誕生されたとされる八幡信仰でも重要な八幡宮です。

多くの人々が参拝に訪れる宇美八幡宮

30代敏達天皇が応神天皇を祀ったことから始まった宇美八幡宮は、皇室の御崇敬が篤い八幡宮として発展していきました。平安時代頃からは石清水八幡宮と本末関係となり、多くの人々から信仰を集めました。鎌倉時代初期からは、神功皇后の安産のいわれから、安産信仰が盛んになります。戦国時代に一時衰退しますが、江戸時代にこの地を治めた黒田氏の保護により、再び勢いを取り戻し、現在は、多くの人々が安産などの参拝に訪れる八幡宮として崇敬されています。

水量豊富な産湯の水

応神天皇のご誕生にかかわる木々や社が多い宇美八幡宮の境内

宇美八幡宮の主祭神は応神天皇ではあるものの、境内を歩いてみると応神天皇のご誕生にかかわる木々や社が多く、神がかり的な安産を果たした神功皇后が主役のように感じます。現在も神功皇后が非常に軽い安産であったことにあやかり、多くの人々が安産祈願に訪れる宇美八幡宮の境内をご紹介します。

衣掛の森

湯葢の森と衣掛の森

宇美八幡宮の本殿の近くには、「湯葢の森」「衣掛の森」という存在感のある大樟があります。神功皇后が応神天皇天皇を出産される折りには、湯葢の森の下で産湯を使い、衣掛の森に産衣を掛けたとされています。「湯葢の森」は社殿に向かって右側、「衣掛の森」は社殿向かって左側にあります。樹齢二千年以上とも推定される老樹は、宇美八幡宮を訪れた多くの人々を見守ってきたことでしょう。

湯葢の森

子安の木

神功皇后が出産の際に槐(えんじゅ)と呼ばれるマメ科の木に取りすがって応神天皇を安産にてお産みになったといういわれから、宇美八幡宮は今日まで種を絶やさず守り続けました。そして産平安の衣木(みそぎ)、つまり皇后皇女の安産を祈って神仏の像を造るときは、「宇美宮の槐」を用いたとされています。境内にある槐は「平産の幸ある木」という意味で「子安の木」と称されています。槐は中国の本草学によると、解毒、補精に効果があり、その枝にすがれば安産するという信仰があります。

 

湯方社

神功皇后が応神天皇を出産される際に立ち会った官女が、今でいう助産婦の役割を行ったと伝えられており、「湯方社」として宇美八幡宮の本殿裏に祀られています。この「湯方社」を囲むように玉垣を築き、「子安の石」と呼ばれるこぶし位の石が山ほど積まれています。

子安の石

子安の石

安産祈願を終えた人がこの「子安の石」を持ち帰り、めでたく出産となれば、別の石に生まれた子供の名前などを書いて健やかな成長を願い、安産御礼のご祈願にてお祓いの後、持ち帰った石とともに納める習わしとなっています。見渡すとたくさんの名前が書かれた石が納められており、その量から安産信仰の篤さを感じます。

産湯の水

産湯の水

宇美八幡宮の境内北隅にある「産湯の水」は、応神天皇が誕生された際に使われた産湯とされており、表示石に刻まれている字は、第32代内閣総理大臣である廣田弘毅氏の揮毛によるものです。「産湯の水」は、安産のご利益があるとして多くの安産祈願者が水を汲みに訪れます。

奥宮

奥宮(胞衣ヶ浦)

宇美八幡宮の本殿から宇美川を橋で渡り、北東へ約250m行った場所にある小山に、奥宮は、鎮座しています。神功皇后が出産した後、胞衣は産舎の後なる川(宇美川)にてすすぎ、胞衣を筥に入れて奉安したと伝えている場所に鎮座しているため、奥宮は胞衣ヶ浦とも称せられています。

命のパワーを感じる宇美八幡宮

宇美八幡宮は戌の日になると帯祝いと称して、いつもより多くの参拝者で賑わいます。犬は多産が多いことや吠えて家を守るために邪気を払う意味があるといわれており、妊娠5ヶ月の戌の日には腹帯を巻く習慣があります。腹帯には胎児を守る意味と、胎児の霊魂を安定させる信仰的な意味もあります。皇室においても、一般の帯祝いと同様の「着帯の儀」が執り行われています。宇美八幡宮の境内を歩くと多くの人々が安産を祈願する神社だけに、木々などの緑豊かな植物、産湯の水や子安の石など魂や生命力を感じさせるものが多いような気がします。新しく宿る命に期待を寄せる気持ちが、目に見えてくるように感じます。皆さんも宇美八幡宮を訪れてみて、この八幡宮から発信される命のパワーを感じとってみてはいかがでしょうか。

 

 

 

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