豊かな生態系を誇る動植物の王国、泥炭層の上に美しい花を開く唐比ハス園

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唐比ハス園
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素晴らしい自然環境に囲まれた唐比ハス園

長崎県諫早市森山町にある唐比ハス園は、13種類の蓮と12種類の睡蓮が植えられている種類豊富なハス園です。蓮の花は6月中旬頃から7月中旬頃まで、睡蓮の花は、5月上旬から10月中旬まで楽しむことができます。唐比ハス園は、豊かな生態系を誇る唐比湿地にあり、天然のメダカなどの貴重な生物や、絶滅危惧種に指定されている植物を楽しみながら、睡蓮や蓮を観察できます。そして、唐比ハス園の周辺には沼や葦原などの自然や、牛や馬などを飼育している牧場、れんこん田、水田などがあり、素晴らしい自然環境に囲まれています。今回は、大きくて上品な花を咲かせる蓮や睡蓮を取り上げながら、唐比ハス園のある唐比湿地の自然や、特産品である唐比れんこんについて触れていきます。

唐比湿地の自然のままに残された沼地

長い年月を経て泥炭湿地帯になった唐比湿地

唐比湿地は雲仙地溝帯の北側にあたり、約6000年前に橘湾の入り江が小石などの堆積によって自然に陸地になった場所です。その後、陸地になった場所に植物が繁茂するようになり、枯れた植物が海から変化した湖に堆積し、長い年月を経て泥炭湿地帯となりました。泥炭層は有機物を多く含むため、数多くの微生物が存在しています。広さ60haある唐比湿地のフワフワするようなゆるい地面には、自然が作った豊かな生態系が広がっています。唐比湿地の土は、植物の生育に良い腐食土であり、農業に適した土でもあります。古来よりれんこん田や水田として利用してきた歴史があり、昭和40〜50年頃には、農地の土質改良をはかるために、唐比湿地の土を露天掘りして、船で搬出されたこともありました。

池に咲く睡蓮

地元有志で運営されている唐比ハス園

平成5年に地元有志でつくる唐比すいれんの会が、30アールほどの湿地帯に蓮や睡蓮の苗を植えたことから始まった唐比ハス園。その後、徐々に栽培エリアを拡大し、訪問客が蓮や睡蓮を観賞できる環境を整備していきました。令和4年現在、開花時期の異なる蓮や睡蓮が植えられた唐比ハス園の土地が、約2.5ヘクタールまで広がり、ゆるい地面の園内を快適に回遊するために整備された木製の歩道は、約1キロにも及びます。唐比ハス園の整備や維持・管理、そして毎年美しい花を咲かせるために、日々努力を重ねている方々には、感謝の念を抱かずにはいられません。

唐比ハス園の見頃

蓮の花は、午前7〜9時頃に花が開き、午後には花を閉じるので、見物は8〜10時頃がベストです。唐比ハス園には、「三色蓮」、「王子連」、「白万々」、「ミセススローカム」、「浄台蓮」、「大賀蓮」、「クリスタルビューティー」、「菊花粉」、「真如蓮」そして「唐比古代蓮」などの多品種にわたる蓮が栽培されています。そのため見頃の時期はそれぞれになりますが、多くの品種の見頃が重なる時期は、6月下旬から7月中旬になります。この時期が、蓮の花で最も彩られるため、毎年多くのプロ・アマのカメラマンで賑わいます。白やピンク、白とピンクの混合、また、色の濃淡が異なっているので、一つ一つ丁寧に見ていくのもいいでしょう。また、梅雨の時期と重なるため、出来れば雨上がりの午前中に見学したいところです。雨上がりに水滴が、蓮の葉の上でコロコロと弾ける印象的な光景を目にすることができます。

やみつきになりそうな独特な味わいの唐比れんこん

唐比湿地には、観賞用のハス園とは別に、1300年の伝統を持つ特産品の唐比れんこんが栽培されています。全国でも珍しい泥炭層でできた唐比れんこんは、ホクホクとした食感と粘り気があります。そして塩分のある唐比湿地の土壌で育ったれんこんは、若干塩味がして、やみつきになりそうな独特な味わいがあります。昭和32年の諫早大水害や、泥炭での農作業は手作業に頼らざるを得ないことから、一旦衰退しました。しかし唐比れんこんの味を忘れられない人も多く、地元の有志や新規就農者の手によって、収穫量は復活しつつあります。泥炭層で機械化が阻まれている唐比れんこんは、生産量が少ないため市場に出回っていません。そのため希少価値が高く、「まぼろしの唐比れんこん」と呼ばれています。

水かさの増したハス園

唐比ハス園を展望できる食事処

毎年11月に収穫される唐比れんこんは、直売所やイベントなどで販売され、長崎県外からも買いに来る人がいるほどの人気です。唐比湿地公園の入口近くに立地するお食事処 朝比は、唐比れんこんを使った料理を提供しています。地元長崎の魚や肉料理が頂けるこのお店は、店内から唐比ハス園を展望が可能です。蓮の花の季節はれんこんの収穫時期ではありませんが、冷凍保存したれんこんを、数量限定で調理したものを提供しています。

観察するといろんな発見がある唐比ハス園

小さな池や泥田が混在し、そこに美しい睡蓮や蓮の花が大きく開く唐比ハス園。トンボやカエル、アメンボ、メダカ、そして野鳥など、かつて日本の田園のどこにでもいた生き物が、たくさん生息している唐比湿地。睡蓮や蓮の花が咲いている池や泥田を跨ぐ木道とフワフワするゆるい地面を歩くと、たくさんの動植物が生き生きと活動している様子を、目や耳を通して感じることができます。長靴を用意して、園内をくまなく巡るのもいいと思います。園内をじっくりと見てみるといろんな発見がある唐比ハス園。みなさんも唐比ハス園を訪れてみて、生態系豊かな湿原と、泥沼に咲く美しい花を観察してみては、いかがでしょうか。

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