有田焼の陶祖李参平の死後に建てられた焼き物の神様を祀る神社、有田焼の歴史を感じ、有田の町の発展を見守ってきた陶山神社

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JR佐世保線

有田の陶工や多くの人の信仰を集める陶山神社

佐賀県有田町にある陶山神社は、応神天皇を主祭神とし、有田焼にゆかりの深い佐賀鍋島藩の藩祖鍋島直茂と有田焼の陶祖である李参平を祀っている焼き物の神様の神社です。境内には有田の陶工たちが奉納した磁器製の鳥居や狛犬、灯籠などがあり、これらは有田焼の匠の技を駆使した磁器の逸品です。また陶山神社の脇から坂道を上っていったところに李参平の碑があり、毎年5月4日に陶祖祭が行われます。陶祖の李参平が亡くなった後に創建された陶山神社は、有田の陶工や多くの人の信仰を集めながら、その歴史は現在に受け継がれています。今回は陶山神社が歩んでいった歴史に触れながらその魅力に迫っていきます。

陶祖李参平の碑から有田の町を望む

有田に磁器鉱を発見した陶祖李参平

16世紀末に豊臣政権が行った文禄・慶長の役(朝鮮出兵)で、高度な磁器の生産技術を持った朝鮮人を日本に連行しました。このうち朝鮮に出兵した鍋島直正は、朝鮮人陶工の李参平を領地のある佐賀に連れて帰り、焼き物に従事させます。しかし思いどおりの焼き物が出来ず、白磁に適した陶土を探すため、鍋島藩の領内を歩きまわるようになります。そして1610年代に李参平は、有田の泉山にて良質の磁器鉱を発見しました。こうして良質な磁器鉱から採れた良質な陶土を使った陶磁器の生産が有田とその周辺で行われるようになります。有田の陶磁器の評判は全国に広まり、有田の陶器製造が年々盛んになっていきました。そして李参平が亡くなって間もない1658年、有田皿山代官の命により、現在の陶山神社のある大樽山に後の陶山神社となる「有田皿山宗廟八幡宮」を創建しました。

陶工たちが陶山神社に寄進した作品

陶工たちが寄進した作品が境内にある陶山神社

陶山神社は、現在の伊万里市二里町にある神原八幡宮から主祭神の応神天皇の霊を移し、建立されたため、明治4年まで「有田皿山宗廟八幡宮」という名前でした。有田焼の歴史を作った鍋島直茂と李参平が相殿神として祀られた陶山神社は、陶工たちに「有田焼陶祖の神」として崇敬を集めました。境内には陶工たちが寄進した鳥居などの陶磁器製の作品があり、焼き物の神様を祀る神社らしい景観を見ることができます。陶山神社の境内は、陶工たちの卓越した匠の技をつくした作品が見れる、いわば野外美術館のような様相をしています。

陶山神社のシンボル的な存在の磁器製の大鳥居

平成12年に国の登録有形文化財に指定された大鳥居は、陶山神社のシンボル的な存在となっています。大鳥居は明治21年に地元の陶工たちによって奉納され、有田泉山から採れた良質な陶土を使った磁器でできています。磁器製の鳥居は、石や木などで作られている鳥居と比べて、管理が容易ではありません。昭和31年の大きな台風で鳥居の上部が吹き飛ばされたことがありました。その後香蘭社十代目の深川栄左衛門が4年の歳月をかけて修復しました。現在の大鳥居は、令和2年に施された修復作業が完了したものになっています。高さ3.7m、幅3.9mもある大きな鳥居に、染め付けの美しい唐草紋様が絵付けされており、全国的に見ても非常に珍しく一見の価値があります。

陶祖李参平の碑

陶山神社の後背地にある山に建てられた李参平の碑

陶山神社の脇から伸びる山道を歩き階段を登っていくと、10分ほどで有田焼の陶祖である李参平の記念碑に着きます。有田焼の創業から300年を記念して大正6年に建立された李参平の記念碑は、陶山神社の後背地にあたる小さな山の頂きにあります。李参平の記念碑からたくさんの窯元が立ち並ぶ有田の町を一望できる場所にあり、陶祖李参平が、焼き物の町有田を見守っているかのように感じます。感謝と報恩を象徴する碑として大正時代に建てられた李参平の碑は、ここを訪れる現在の我々にも大きな感慨を与えるものがあります。

陶山神社の敷地を通るJR佐世保線の線路

敷地内に線路が通っている陶山神社

陶山神社の境内にはJR佐世保線が通っており、有田の町から歩行者が通る参道には、線路を横断する踏切があります。明治時代後期に有田に鉄道を通す計画が建てられましたが、山に囲まれた盆地の有田は場所が限られており、鉄道用地の確保が難航していました。当時の陶山神社の宮司は、町の発展のために神社敷地に線路を通すのを許可し、明治30年に有田を通る鉄道が開通しました。これで有田焼の鉄道輸送が可能になり、出荷量が拡大しました。陶山神社の鉄道用地の提供は、有田を通る鉄道開通への動きを加速させ、有田にヒト・モノの流れを拡大させ、有田焼の生産をより活発にしました。

焼き物の神社らしい風情を感じる陶山神社

有田のメインストリートから陶山神社の境内へ向かう参道を歩くと目の前に階段がありその上に線路があります。列車が走行しやすい勾配に設計されており、レールが顕になった線路と年季のある石段や鳥居などがコントラストする珍しい光景が広がっています。さらに参道を進むと、磁器製の大鳥居や狛犬などの有田の陶工が最高の技を結集した逸品が奉納されており、焼き物の神様が祀られている神社らしい風情を感じます。5月には陶祖祭、10月にはくんちと、有田焼の歴史を築いた朝鮮人陶工の李参平に感謝する祭りが行われ、春は桜、秋は紅葉で境内を彩ります。創建以来、有田焼き陶工からの崇敬を受け、有田の町とともに歩んできた陶山神社。皆さんも陶山神社を訪れてみて、その良さを発見してみてはいかがでしょうか。

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