佐賀鍋島藩の先祖と境内社の神々が鎮座するバラエティに富んだ神社、日本の近代化に寄与した鍋島直正を偲ばせる佐嘉神社

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佐嘉神社

佐賀の人々から親しまれ、佐賀の歴史の一端が見られる佐嘉神社

佐賀県佐賀市にある佐嘉神社は、佐賀藩の10代藩主鍋島直正と、11代藩主鍋島直大を祀る神社です。鍋島直正は佐賀藩の藩政改革に取り組み、幕末において、日本の近代化に影響を与える雄藩に発展させた名君です。鍋島直大は、明治の廃藩置県後に政府高官として活躍しました。境内には鍋島直正が反射炉で大砲を造ったという偉業を称え、カノン砲やアームストロング砲が展示されています。幕末の近代化を偲ばせる佐嘉神社ですが、鍋島家の祖先を祀る松原神社の南殿を、佐嘉神社として造営したという経緯もあり、佐嘉神社の境内社には、佐賀の人々が昔から信仰してきた神様がたくさん祀られています。今回は鍋島直正の日本の近代化における功績に触れながら、佐賀の人々から親しまれ、佐賀の歴史の一端が見られる佐嘉神社に迫っていきます。

佐嘉神社境内のそばを流れる松原川

鍋島直正が臨んだ藩政改革

佐嘉神社の主祭神である鍋島直正は、1830年に佐賀藩10代藩主として家督を継ぎます。鍋島直正は、アヘン戦争で中国が欧米列強の軍事力に屈したことに衝撃を受け、長崎警備の強化を痛切に感じます。そして欧米列強の脅威に対抗するために、佐賀藩の力を強める藩政改革に取り組みます。改革では現実主義者の鍋島直正らしく、佐賀藩を支える基礎的な分野を重視し、質素倹約や借金整理などの財政再建や弘道館での教育を充実させるなどの人材教育に力を入れました。藩主自ら改革に臨んだこともあり、藩の財政は好転し、有能な人材を佐賀から多く輩出するようになりました。

佐嘉神社の境内にある松原の楠

佐嘉神社境内にある松原の楠

 

 

日本近代化の礎となった鍋島直正の諸政策

鍋島直正は、佐賀藩の近代化に積極的でした。長崎からの海外情報をいち早く手に入れることによって、軍事や医学などの西洋の優れた科学技術を取り入れます。日本で初めての反射炉を建設して鉄製大砲を鋳造したり、蒸気機関の研究を行って日本初の蒸気船「凌風丸」を建造したりします。また藩士を長崎海軍伝習所で学ばせたり、佐賀藩独自の海軍技術の教練を行う「三重津海軍所」を開設するなど、海軍力の増強にも努めました。西洋医学においては、医師の免許制度を創設し、種痘を全国に普及させるなど、その発展に寄与しました。明治維新の目まぐるしい政治的変化には、薩摩・長州両藩に出遅れた感は否めませんが、鍋島直正の藩政改革は、幕府や諸藩に負けないほどの国力を佐賀藩にもたらし、日本の近代化の礎となりました。

佐嘉神社に展示されているカノン砲

昭和天皇の命で、創建された佐嘉神社

藩祖の鍋島直茂を主祭神とし、鍋島家先祖を祀る松原神社は、1772年に佐賀藩の8代藩主鍋島治茂によって「日峯社」として創建された神社です。明治6年には「松原神社」に改め、鍋島氏の主君であった龍造寺家歴代当主の龍造寺隆信、政家、高房を北殿を造営して祀り、明治4年に亡くなった幕末の名君である鍋島直正を、南殿を造営して祀りました。そして大正12年には鍋島直大を、南殿に合祀します。昭和に入ると、昭和天皇が鍋島直正が行った近代化事業の功績を重んじて、昭和4年に「佐嘉神社」の創建を命じます。こうして佐賀城公園や佐賀県庁の近くである現在の場所に、佐嘉神社が創建されることになりました。

松原神社の本殿

幕末に製造された近代的な大砲が展示されている佐嘉神社

昭和8年に創建された「佐嘉神社」は、鍋島直正の国家への功績を評した昭和天皇の格別な思し召しにより、別格官弊社に列せられました。昭和23年に鍋島直大を合祀することによって松原神社南殿はなくなり、昭和36年には佐嘉神社と松原神社の運営を一体化します。松原神社は佐嘉神社の境内社となり、佐嘉神社は松原神社の由緒を引き継ぐ神社となりました。境内には、神社が8つもあり、有田焼で作られた灯籠や鳥居、幕末に製造された近代的な大砲などを見ることができます。元旦には、午前零時の時報を合図に8発の祝砲が放たれる「カノン祝砲神事」が行われます。

佐嘉神社の境内社である松原恵比須社

たくさんの人々がお願い事におとずれる佐嘉神社の境内社「松原恵比須社」

文化・交通・学問の神とされる佐嘉神社、鍋島家の祖先を祀る松原神社をはじめ境内の神社を全てまわると、大願成就するといわれています。これだけの神々や様々な文化が1ヵ所に集まった神社は珍しく、一見の価値があります。境内社の一つである「松原恵比須社」は、佐賀にある約1000体の恵比須像の中心ともいえる存在で、地元では「とんさん恵比須」として親しまれています。松原恵比須社の恵比須像の台座には金鉱脈が使われていることから、開運招福や商売繁盛に加えて宝くじ当選のご利益があるとも言われており、たくさんの人がお願い事に訪れています。

佐賀鍋島藩の歴史を感じ、庶民の信仰が色濃く残る佐嘉神社

佐嘉神社の境内には、佐賀県の木でもある楠が約60本あります。その中でも樹齢が600年以上ある松原の楠は、開運長寿・身体健全の御利益があるとされています。佐嘉神社の周辺には松原川が流れており、その水辺には鯉や鳥を観察できる憩いの空間があります。佐嘉神社は、佐賀市街地の中心に立地していますが、人々が自然と触れ合いやすい素晴らしい環境が境内にはあります。松原の楠の向かいにあり、松原川沿いに鎮座する「松原河童社」は、水害から子供たちを守りたいという願いで建てられた佐嘉神社の境内社です。佐嘉神社は佐賀鍋島藩の歴史を感じる神社でありながら、一方では、庶民から親しまれてきた信仰が色濃く残る珍しい神社です。皆さんも佐嘉神社を訪れてみてはいかがでしょうか。

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