ダイナミックな阿蘇の自然の営みを感じるビュースポット、大きく広がるカルデラに計り知れない物語が聞こえる大観峰

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カルデラ

阿蘇の大自然を感じるビュースポット大観峰

熊本県阿蘇市にある大観峰は、阿蘇五岳が一望できる絶好のビュースポットです。阿蘇北外輪山の最高峰にあたる大観峰は、火山の噴火によってできた世界最大規模の阿蘇カルデラが真下にあり、阿蘇のダイナミックな大自然を感じることができます。阿蘇だけではなく九重連山も眺めることができるビュースポットの大観峰は、阿蘇五岳と並んで阿蘇の二大観光地の一つとなっています。今回は阿蘇のカルデラに触れながら、四季折々に豊かな表情を見せる大観峰の魅力について迫っていきます。

野焼きした大観峰の大地から見る阿蘇五岳

阿蘇五岳を一望できる大観峰

大観峰の展望台からは、阿蘇五岳を一望できます。阿蘇五岳が連なったかたちが釈迦の涅槃像のように見えることから「阿蘇涅槃像」と呼ばれています。顔の部分が「根子岳」、胸のあたりが「高岳」、おへそのあたりが火口のある「中岳」、足元の方へ向かって「烏帽子岳」、「杵島岳」と続きます。そして阿蘇涅槃像の床となっているのが、阿蘇カルデラとなります。東西18km、南北25kmと、世界最大規模を誇る阿蘇のカルデラは、阿蘇北外輪山の最高峰である標高936mの大観峰からでも、視界に収めることができません。

大観峰と書かれた大きな石碑。大観峰の記念写真スポット。

計り知れない阿蘇の大噴火を感じる巨大カルデラ

阿蘇はもともと大きなマグマ溜まりを持つ火山帯でした。その阿蘇の火山帯が約27〜9万年前に4度の大噴火を起こします。噴火により溜まっていたマグマが抜け地下が空洞化し、年月を重ねた後に大地が陥没してカルデラを形成しました。阿蘇にあった大きな山が大陥没を起こした時期は場所によって異なりますが、大観峰付近の陥没は、約3万年前といわれています。当時は旧石器時代にあたり、大観峰の遺跡には3万年前より古いものは出土しますが、それ以降は約1万年前のものしか見つかっていません。おそらくこの地に住んでいた人々は、大陥没によって亡くなったか、よその土地に移り住んだのではないでしょうか。大観峰からその全体を把握できない巨大なカルデラは、計り知れない大噴火を経てできた大自然の営みそのものなのです。

 

 

巨大な湖を形成していた巨大カルデラ

大噴火が原因で出現した阿蘇の巨大カルデラには水が溜まり、カルデラ湖を形成しました。湖面の高さは標高500mくらいのところまであり、現在のカルデラ床とほぼ同じくらいであったと考えられます。カルデラ湖には雨水とともに、大量の土砂や火山灰が流入しました。そうしてできた湖成層が約300mにも達していることが学術調査でわかってます。そして約7万年前に外輪山西側の長陽村立野付近が決壊して湖水が流出していったのではないかと推定されています。外輪山の断層にひびが入り、そこから染み出た湖水が浸食して傷口を広げていき決壊につながったされています。

大観峰の駐車場から展望台までは徒歩になる。 約1㎞の道のりがある。

阿蘇のカルデラ湖を物語る鯰伝説

鯰伝説と呼ばれる阿蘇開拓にまつわる言い伝えでは、健磐龍命が、立野火口瀬を蹴破った後に、カルデラ湖の主である大鯰を説得して立ち退いたところ、大鯰が堰き止めていた水が流れ出し、湖の水を抜くことができたとされています。カルデラ湖の南側は今から約4万年前と比較的早く干上がったのに対して、北側は弥生時代の船の櫂などが出土していることからごく最近まで水域が残っていたところがあったようです。陥没などの自然現象が続いたカルデラ湖の北側は、少なくとも約6000年前くらいまでは湖が残存していたのではないかと考えられます。このように北側の干上がりが遅かったことが、鯰伝説につながったのではないかと筆者は考えています。国造神社の記事で鯰伝説について触れています。

阿蘇北外輪山の最高峰に立つ大観峰アンテナ群

阿蘇を代表する観光地、大観峰

昔は外輪山が谷内へ突出した部分を鼻と読んでいました。大観峰は、カルデラの方向へ突出しており、また阿蘇五岳や九重連山、カルデラ盆地の阿蘇谷を一望できることから、昔は「遠見ヶ鼻」と呼ばれていました。大正時代になると、熊本出身の思想家・ジャーナリストの徳富蘇峰によって、「景色が一望できる山頂」という意味から「大観峰」と命名され、阿蘇を代表する観光地として発展していきました。大観峰周辺の尾根には、緩やかな起伏で牧草地が遠くどこまでも続いています。ここを整備した道路が通称「ミルクロード」と呼ばれる道で、周辺に牧場が多く点在していることから名付けられました。大観峰へのアクセス道路にもなっているミルクロードは、草原地帯を貫いて走る絶好のドライブコースです。道は小さなアップダウンを繰り返しながら右へ左へ曲がりながら進むので、変化する景色を楽しみながらドライブすることができます。

 

大観峰のパノラマビューから見える阿蘇の自然と人々の共生

大自然のパノラマビューが広がり、訪れる人を楽しませる大観峰は、季節によって様々な姿を見せます。大観峰の代表的な風景といえば、緑がいっぱいに広がる景色を思い浮かべる人が多いと思いますが、この素晴らしい阿蘇の景色を守るために1000年以上も昔から「野焼き」が続いています。毎年3月頃から始まる野焼きは、冬を経て褐色になった草を焼き払い、春に新緑の息吹きを促進します。阿蘇の大噴火によってできた雄大な自然は、現在を生きる我々にとっても欠かせない存在であり、人々の営みと共生する自然が今後も続いていってほしいと、大観峰からの景色を見て感じました。

 

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