何万年も噴火を繰り返した阿蘇山で今も火山活動を継続、噴火の警戒監視続くも自動車を使って火口観光が出来る阿蘇中岳火口

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カルデラ

 

有史以降も、噴火が続く阿蘇中岳火口

熊本県阿蘇市にある阿蘇中岳火口は、今も活発な火山活動が続いている火口です。一般の観光客が立ち入ることのできる火口縁まで近づくと、激しく噴煙上げる火口の様子を見ることができます。現在火山活動中の阿蘇第1火口は周囲約4kmもあり、見物客を圧倒するほどの大きさをもつ阿蘇中岳火口。阿蘇山は火口縁にいる観光客に被害をもたらす噴火を起こす危険性があり、警戒を絶やすことなく行っています。しかし何万年も前の阿蘇山は、もっと大規模で、今とはくらべものにならない程の壮大な噴火を起こす活火山でした。今回は九州ひいては日本の地質や自然に大きな影響をもたらした何万年も前の阿蘇山の大噴火に触れながら、人類の有史以降も噴火活動が続いている阿蘇中岳火口に迫っていきます。

 

ヒマラヤ山脈を超える標高だったかもしれない阿蘇山

阿蘇五岳の最高峰である高岳の標高は1592m、中央にある中岳は1506mあり、現在噴煙を上げている火口は1300m、中岳の火口を望む烏帽子岳の中腹にある草千里は1157mと、人々が観光地として訪れ、親しまれている阿蘇山は、軒並み1000m以上の標高で構成されています。しかし火山学者の話によれば、阿蘇山の本来の高さは、9000〜12000mであったと推測できるというのです。これは、約9万年前の大噴火などに代表される阿蘇山が崩壊するほどの噴火がなかったらという前提になりますが、阿蘇山は、ヒマラヤ山脈を雄に越える山であったのかもしれないというのです。しかし阿蘇山が巨大な山であったならば、日本に現在のような四季のある風通しの良い気候が出現せず、異質な日本文化が誕生していた可能性が高いと思われます。そういうことを考えると、自然が我々人類に与える影響は計り知れないものがあると思わずにはいられません。

中岳火口の展望台から草千里方面を望む

韓国や日本列島に大きな影響を与えた阿蘇の大噴火

何万年も前の大噴火で出来た「阿蘇のカルデラ」は、東西18km、南北25kmという広大な規模を誇ります。この「阿蘇のカルデラ」の外側はゴツゴツとした岩肌が広がっており、当時の溶岩の量が凄かったことを物語っています。阿蘇山は30万年前から9万年前の間に大噴火がありました。特に9万年前に起きた4回目が一番大きな噴火で、鹿児島県を除く九州全域を火砕流が1日で襲い、火山灰は、韓国から日本列島に及ぶ広範囲に降りました。遠くはなれた北海道東部にも10cm以上もの火山灰が降ったといいますから、壮大な規模の噴火であったことがわかります。この何万年も前の大噴火は阿蘇山周辺の地質に大きな影響を及ぼしました。阿蘇山大噴火は、豊富な水資源や大量の凝灰岩などを生み出し、今日生きている我々に多大な恩恵を与えています。

 

阿蘇の巨大カルデラの中に、東西に連なる阿蘇五岳

何万年も前の壮大な噴火の後に、噴火口には巨大なカルデラが形成されました。そして約7万年前にカルデラ内に火口丘群が現れ、3万年前から5万年前に山々が噴火し、現在の阿蘇五岳ができたといわれています。阿蘇五岳は、東西に連なっており、東から順に根子岳、高岳、中岳、烏帽子岳、杵島岳と続いています。また阿蘇五岳の稜線は、釈迦が涅槃したようにも見えることから、「涅槃像」に例えられることも多くあります。有史以降の阿蘇山は、中岳のみの噴火に限られており、火山活動も比較的安定しています。火口から溶岩流が流れ出た記録もなく、日本人は阿蘇山の大噴火という惨禍を受けることなく、現在に至っています。そして古代より阿蘇信仰が生まれ、阿蘇山麓に住む人々は阿蘇山を尊崇しながら阿蘇の大自然を享受してきました。

噴石が飛んできた場合に避難する退避壕の内部

徹底した安全管理が行われている火口見学

昭和時代に中岳火口までの道路が整備されると、火口へは自動車で簡単に行けるようになります。そして中岳火口への観光が盛んになると、観光客が被災する事故が相次ぎました。多くは噴石の被害ですが、火山ガスによる人体への被害も深刻なものがありました。そのため1980年から中岳火口周辺の一部を立ち入り禁止にし、1997年からは有識者を委員とした対策専門委員会を創設しました。現在では火山ガスが一定の基準を超えたり、火山活動が活発になると立ち入り禁止を実施するようになっており、徹底した安全管理が行われています。そのため中岳火口見学は、ある程度の制約下で行うことになります。

エメラルドグリーンの火口湖

地の底を実感する阿蘇中岳火口

中岳火口へのアクセスは、阿蘇公園道路という有料道路を使用します。この阿蘇公園道路側の火口縁は、規制がある場合を除いて立ち入ることができます。火口縁からは、激しく白い噴煙を上げる様子を、間近に見ることができます。火口の底には雨水や湧水が溜まった「湯だまり」といわれる火口湖があり、ガスが晴れた時などに火口縁から見ることができます。火口湖にある液体は、温度50〜60℃の強酸性の湯で、鮮やかなエメラルドグリーンをしています。無機質な生命の息吹きを感じられない湖は、まさに地の底を実感するような光景です。火口縁から火山荒野を、西へ少し歩いていった所に、火山西展望所があります。火口の底は見えませんが、トーチカの様な展望台の屋上からは、烏帽子岳、杵島岳を眺望でき、何万年もかけて形成されてきた阿蘇の雄大な自然を満喫することが出来ます。

感謝と畏敬の念を抱かせる阿蘇の自然

阿蘇山と言えば、雄大な大自然を連想し、その中でも中岳の火口を一番に思い起こす人も多いのではないでしょうか。地鳴り鳴動とともに激しく噴煙を吹き上げる様子は、地の底にあるマグマの計り知れないパワーを感じさせます。火口周辺は溶岩の岩肌がむき出しになっている火山荒野となっていますが、遠くに目を遣ると、緑豊かな生態系が存在しており、自然界の濃淡が如実に感じられます。人類の誕生以来、阿蘇の大噴火という大災害に遭遇しておらず、阿蘇の大自然の恩恵を受けながら、阿蘇周辺地域の文化を育んできました。阿蘇は自然に対して感謝と畏敬の念を抱かせる場所です。皆さんも阿蘇、そして中岳火口を訪れてみてはいかがでしょうか。

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