約1300年の仏教の伝統を受け継いだ雷山の中腹、雷山観音をはじめ諸仏が奉安される場所で鮮やかに色づく紅葉をみせる雷山千如寺

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真言宗

 

歴史ある雷山千如寺の鮮やかな紅葉

福岡県糸島市にある雷山千如寺は、福岡・佐賀両県にまたがる脊振山系・標高955.45mの雷山の中腹に位置する真言宗大覚寺派のお寺です。本尊の十一面千手千眼観世音菩薩をはじめ数多くの文化財を保有し、約1300年の歴史があると言われる雷山千如寺。境内には樹齢約400年の大カエデと、心字庭園にある200本以上のカエデが、例年11月上旬から11月中旬になると鮮やかに色づき、訪れる人を魅了します。今回は、由緒ある雷山千如寺に触れながら、秋には見事に色づく境内の紅葉を取り上げていきます。

朝廷や権力者から尊崇された雷山千如寺

雷山の中腹にある千如寺

雷山千如寺の寺伝では 、仏教が日本に伝えられたとされる300年以上前の174年にインドの僧である清賀上人が日本に渡来し、雷山千如寺が創建されたとされています。日本国内に仏教が広まる前から、人里離れた雷山の地で仏教を実践する場所が存在していたのかもしれません。その後聖武天皇の御代になると勅願道場となり、七堂伽藍が建立され、国家の庇護を受けます。武士の世では名だたる武将が雷山千如寺を尊崇し、為政者などから領地の寄進を受けるようになります。元寇の折には、鎌倉幕府の祈祷寺院として重要な役割を果たします。そして江戸時代の1753年、福岡藩主の黒田継高は現在の寺である大悲王院を建てました。インドの僧が来日した頃と比べれば、寺院としての性格は大分変わったのかもしれませんが、文献のはっきりしない古い時代から、仏教の下地はしっかり作られていたのは確かなようです。そして日本仏教の寺院として変遷を遂げ、現在に至るこのお寺の重みは凄いものがあります。約1300年の伝統を感じながら見る境内の紅葉は、一味も二味も違ったものになるでしょう。

枯山水の庭園に、ひときわ存在感のあるカエデ

千如寺の境内に入ると、砂紋が施された見事な枯山水の庭園があります。そして樹齢約400年のカエデが中央にそびえるように立っています。千如寺境内にはビャクシン2本、カエデ3本の古木があり、訪れる人々を和ませてくれるのですが、この枯山水庭園にあるカエデは、境内にある古木、樹木の中でもひと際存在感を放っています。春夏に左右に大きく広がる枝に茂る緑葉は、秋の紅葉の時期になると真っ赤に色づき、大勢の見物客で賑わいます。福岡県の天然記念物に指定されているこの大きなカエデは、散りかけ時期も美しく鮮やかな落葉が地面を真っ赤に染め、モノトーンな枯山水の庭とのコントラストが見事です。

雷山千如寺の五十羅漢像

一体一体、違った表情の仏像

春のシャクナゲや生命力溢れる新緑、夏の生命力溢れる山中の緑、秋の訪れる人々を魅了する紅葉、冬には降雪なども見られ、仏道修行の場にふさわしい凛とした感じになる雷山千如寺。四季折々の自然豊かな環境に包まれているこの寺は、日本の仏教史よりも長い言い伝えと積み重ねた伝統を持っています。そして寺に奉安されている文化財も多く、「木造千手観音立像」と「木造清賀上人座像」は国の重要文化財、「木造多聞天像」と「木造持国天像」は福岡県の指定文化財に指定されています。その他にも帝釈天や大梵天などの二十八部衆の仏像がズラリと並ぶ通路や斜面一面にたくさんの羅漢様が設けられた五百羅漢像など、数多くの仏教芸術に触れることができます。一体一体それぞれ異なった表情を見せる仏像には、尊さを感じ、一体ずつ手を合わせたくなる気持ちになります。

観音堂への入り口でもある雷山千如寺の本堂

雷山観音と呼ばれる雷山千如寺

現在の千如寺となっている大悲王院の境内には、山門・庫裡・本堂・聖天堂・開山堂・書院・客殿・茶室などの落ち着いた佇まいの仏教建築があります。本尊の木造千手観音立像が安置されている観音堂は多くの参拝者を惹き付けており、雷山千如寺を雷山観音と別称で呼ぶこともあります。本堂から観音堂へは、登り廊下で繋がっていますが、そこからは少し高い位置から、奥行きのある心字庭園を眺めることができ、山中の緑深い中にある境内を再認識します。例年8月9日に行われる千日観音祭では観音堂で護摩法要が行われ、参拝者の所願成就、先祖供養が祈念されます。

ビャクシンと紅葉に彩られる心字庭園

訪れる人々を和ませる心字庭園

心字庭園は、清水を湛える心字池を中心とする庭園で、印象的なカエデのある砂紋が見事な枯山水の庭園とは対照的な美しさがあります。心字庭園は室町時代に作られた歴史のある庭園で、福岡県の天然記念物に指定されている樹齢約600年のビャクシンの老木があります。樹高約9m、根回り約2mあり、木目の詰まった硬い木で、とても見ごたえのある木です。紅葉の季節になると庭園のカエデが鮮やかに色づき、ビャクシンの木とのコントラストがとても美しく映えます。心字庭園にはツツジや桜などもあり、四季折々の彩り豊かな表情があり、訪れる人々の心を和ませます。

 

自然と調和した仏教芸術

明治政府の神仏分離令により、雷山の神社に付属するように建てられた神宮寺は、廃寺になりました。そのため、明治時代には現在の雷山千如寺に、神宮寺の仏像や仏典などが集められ、それらを奉安するために、観音堂などが建築されました。それらの美しい仏教建築と境内の樹木は、絶妙の調和を生み出しており、紅葉の季節に見せる鮮やかでかつ落ち着いた表情は、日本伝統の仏教芸術といっても良いのではないでしょうか。みなさんも雷山千如寺を訪れてみて、自然と調和した日本の仏教芸術を確かめてみてはいかがでしょうか。

 

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