江戸時代につくられた防災目的の松林が白砂青松の風景を生み出す、全長約4.5kmも広がる風光明媚な景観の虹の松原

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佐賀県

約100万本の黒松が広がる虹の松原

佐賀県唐津市にある虹の松原は、静岡県の三保松原、福井県の気比の松原とともに日本三大松原の一つに数えられ、海岸線に沿って虹の弧を描くように松が群生している美しい松原です。虹の松原は、長さ約4.5km、幅約500m、面積214haにもおよぶ規模を誇り、国の特別名勝にも指定されています。黒松を中心に約100万本の松が広がっており、虹の松原を貫く県道を自動車で走行したり、徒歩で松の木を身近に感じたりしながら松原の内部が見学ができるほか、隣接する鏡山の展望台からは、眼下に広がる美しい虹の松原の景観を一望することができます。今回は虹の松原について取り上げ、その魅力について迫っていきます。

唐津を代表する風光明媚な景勝地、虹の松原

唐津市は、ユネスコ無形文化遺産に登録された唐津神社の秋祭りである唐津くんちが有名な市です。そして唐津市は、海や山などの美しい自然の景勝地がたくさんある市でもあり、週末になると自然を求めに来た観光客で賑わいます。虹の松原は、唐津市を代表する風光明媚な景観を有する自然豊かな景勝地です。虹の松原は、南方を平野部から標高284mの鏡山に連なり、北方を美しい大小の島々で構成する唐津湾に接しています。松原の中を通る県道は、延々と続く松林がまるで「松のトンネル」のようになっており、唐津市内でも絶好のドライブコースとなっています。

虹の松原を貫く県道

江戸時代に植林された虹の松原

虹の松原は、今から約400年前の江戸時代初期、防風、防砂、防潮から後背地の田畑を守るために植林された黒松の群生地です。初代唐津藩主の寺沢広高が、海岸線の砂丘に黒松を植林したのが始まりとされています。黒松は、風に強く栄養に乏しい砂丘でも育つ特性を持っており、この地に適している品種でした。唐津藩は、松原を直轄する御山として伐採を禁じ、領民に対しては、燃料として落葉落枝を採取することを一定額の年貢を納めることによって許可したとされています。唐津藩が大事に育てて管理したこの松原は、江戸時代はその長さにより二里の松原と呼ばれており、この松原に触れている紀行文もいくつかあります。一例を挙げれば「沖から見れば渚が虹のように湾曲しており、とくに夕陽のさかんな時刻など、浪も白沙も赤く陽に染まり、その色が松原に揺曳(ようえい)して虹がかかったように見える」という文章があり、江戸の当時から風光明媚な松原であったことがわかります。江戸時代の頃から一般世間では「虹」という表現が使われてられていたようですが、虹の松原と公に呼ばれるようになったのは、明治時代になってからになります。

強風の影響で変化に富んだ枝張りをみせる黒松

海からの強風を耐え抜いてきた黒松の群生

江戸時代から続く人工植林と自然繁茂により規模を拡大した虹の松原は、歳月をかけて現在のような松の大群生地に発展しました。樹齢数百年を超える老木から幼木に至るまで約100万本の松を誇る虹の松原は、冬の海からの強い季節風の吹き付けのため、変化に富んだ枝張りの良い松が数多く存在します。樹高が20〜25mある松は、虹の松原の端から鏡山に挟まれた農地や宅地を海からの風や高潮から守っています。海岸付近は、樹齢200年くらいの天然の松と樹齢70年くらいまでの若い人工植林した松が大部分を占め、黒松の醸し出す森林美の世界が展開しています。そして、内陸部に進むと広葉樹も見られるようになり、松と広葉樹の混合林となっています。

虹の松原の景観を守るボランティア活動

昭和30年頃までは、虹の松原の松葉や枯れ枝などを家庭の燃料として利用していたので、「白砂青松」の景観が保たれていました。白砂青松とは白い砂と黒松により形成される日本の美しい海岸のたとえです。しかし近年では、住民のライフスタイルの変化で、落葉落枝を採取することがなくなりました。そのため松葉や枯れ枝が採取されることなく土に戻ることで、土壌の養分が豊富になりました。そうなると今まで黒松の独壇場であった場所に、雑草や広葉樹の雑木がはびこるようになり、これまでの白砂青松の景観が損なわれつつあります。現在では、松葉かきなどのボランティア活動が行われるようになり、再び黒松が繁茂する白砂青松の景観を、取り戻そうとする取り組みが行われています。

鏡山展望台から虹の松原を望む

虹の松原を一望できる鏡山展望台

春には桜やツツジなどの名所となる鏡山の展望台は、虹の松原の全景を一望できる絶好のビュースポットです。唐津湾は古くより松浦潟として和歌にも詠まれてきました。唐津湾の緩やかな弧状の海岸線に沿うように黒松を植林した松林は約4.5kmあります。唐津湾の美しい島々や海岸線、松林の西端付近にある唐津城を眺めながら見る虹の松原は、唐津の旅情を掻き立てられるものがあります。

黒松林の中に踏み入る

虹の松原の素晴らしさを確認してみましょう

虹の松原は、コゲラ、カワラヒラ、エナガ等の85種類もの野鳥やモグラ、ノウザギ等の様々な動物、ショウロ、アミタケ等の希少なキノコ類が確認されています。爽涼な空気とすがすがしい松の香りに包まれた松林を歩いていると思いがけない発見に歓喜することもあるでしょう。虹の松原は、砂浜の松を守り育てることで美しい景観を保ち続け、代々引き継がれていきました。土木建築技術が進歩した現在においても、広大な砂丘に冬の強い季節風に耐えながら群生している黒松は、各種保安林としても十分に役割を果たしています。皆さんも先人が守り続けてきた自然遺産虹の松原を訪れてみて、その素晴らしさを確認してみてはいかがでしょうか。

松林の出口から高島を望む

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