蒲田池を中心にした自然豊かな癒しの空間、九州大学の演習林としてたくさんの植物が生い茂る篠栗九大の森

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ラクチョウ

豊かな自然体系を感じる篠栗九大の森

福岡県篠栗町にある篠栗九大の森は、豊かな自然体系が維持されている九州大学農学部附属演習林の敷地の一部を整備して、多くの人々が自然を体感できるように一般開放した森です。福岡演習林にある蒲田池を中心に整備された篠栗九大の森は、池を周回する遊歩道があり、四季折々の自然の表情を楽しみながら散策することができます。またJR博多駅から自動車で約30分という立地で福岡都市圏にありながら、豊富な種類の植物に囲まれた環境を満喫できる環境があるのは、大変貴重でもあります。今回は篠栗九大の森の成り立ちに触れながら、森の随所にある癒しの空間や魅力に迫っていきます。

篠栗九大の森の中心に位置する蒲田池

人の手によって進化していった篠栗九大の森

篠栗九大の森の中心をなす蒲田池は、農業用の溜め池として造られた人工池であり、現在も池の水は農業用水として使用されています。そのため降水量や農業用水の使用量によって池の水位が変わります。もともと水資源の乏しい場所に造られた溜め池ですから、池の水が満々としている期間が少なく、水位の変化が激しい様々な表情の篠栗九大の森を見ることができます。また、蒲田池の後背地にある山林は昔から里山として大切に守られてきました。大正11年には現在の九州大学の前身である九州帝国大学の福岡演習林となり、観察や実験を行うために貴重な自然体系が保護されました。戦後は後身の九州大学が農学部附属演習林となり、多品種の植物の植生を積極的に行います。そのため、福岡演習林は豊富な種類の植物が生い茂る緑の濃い森へと進化していきました。

遊歩道にシダ植物が生い茂る

市街地に接した憩いの場所

福岡演習林は、福岡市のベッドタウンである福岡県篠栗町から久山町にかけて広がっており、周辺住民から林地の自由な利用を求める声が出てきました。そしてこうした住民の要望に応えるために、篠栗の市街地に接した蒲田池と周囲の雑木林の区域約17haを「篠栗九大の森」として整備し、一般開放することになりました。演習林の一般開放は全国でも初めての試みで、安全に配慮して「篠栗町と九州大学の共同管理」という方式をとりました。そして池を周回する約2kmの遊歩道を備えることにより、一般開放区域の回遊性を高め、自然観察や環境学習がしやすい工夫を施しています。平成22年に完成した「篠栗九大の森」は、自然観察やウォーキングなどで年間約1万人の人々が利用する憩いの場所となっています。

水辺の癒しの空間

人々の健康増進に寄与する篠栗九大の森

篠栗九大の森は、スギやヒノキを中心に構成する人工林ですが、森林フィールドでの教育・研究を果たすために、多品種の樹木が植林されています。約17haの敷地には、沿岸性のものから山地性のものまで多様な樹木が分布しており、タブノキ、ヤマモモなど約50種類の常緑樹と、コナラ、ハゼノキなど約40種の落葉広葉樹が生育しています。篠栗九大の森の中心を占める蒲田池を周回する遊歩道にはウッドチップを敷き、森林の間伐材を使用した東屋やベンチが所々にあります。篠栗町は、古くから篠栗四国霊場としても知られる遍路の地で、三方を山に囲まれた豊かな自然を持つ町です。そんな自然豊かな篠栗町は、森林セラピー基地の認定を受けており、篠栗九大の森はその散策コースの一つとなっています。これまで我々は「森林浴」として感覚的に癒される体験をしてきましたが、これを科学的に解明し、森林の力で「こころとからだ」を健康にしようとするのが森林セラピーです。森林セラピーには案内人がいて、森林浴をする人により多くの癒しの効果が得られるような手助けをしています。科学的な観点で人々の健康増進につなげる「森林セラピー」が、大いに発展することを期待したいところです。

篠栗九大の森のラクチョウ

蒲田池に佇むラクチョウ

篠栗九大の森の中でも、ラクチョウが群生している場所は、神秘的な雰囲気の漂う人気のスポットです。水辺を好むことから「沼杉」とも呼ばれるラクチョウは、根元が蒲田池の水につかった状態で林立しています。北米原産のラクチョウが群生しているのは日本では珍しく、水中から生えている状態を国内で見学できる場所は、篠栗九大の森の他に高知県のモネ庭にあるトンボ池があります。昭和52年に蒲田池にラクショウの苗を植えて以来、順調に成長していきました。篠栗九大の森として一般開放されるようになると、SNSなどで若い人を中心に人気が徐々に広がり、周辺道路の渋滞が問題になるほどの人が訪れようになります。水中からまっすぐ伸びたラクチョウの巨木が何本も佇む姿は、幻想的な風景として我々の目に映ります。蒲田池の水位は降雨量や、農業用水としての使用状況によって変わり、干上がった状態の時もありますが、水位によって表情のかわる様子を観察してみるのも味わいがあるものです。

所々に自然の素晴らしさを感じる篠栗九大の森

木々に覆われた木陰のトンネル、所々にある木漏れ日、スギやヒノキなどの木の香りなどに触れながら蒲田池を一周する篠栗九大の森の散策コースは、湖畔ならではの癒しの空間が存在します。そして所々にある神秘的にも見える景色は、訪れた人々に息をのむような感動を与えます。ありのままの自然が残る篠栗九大の森は、雨が降ると道がぬかるんだり、スズメバチやマムシが出たりはしますが、比較的歩きやすい散策路となっており、特別な装備等がいらない手軽なハイキングコースでもあります。皆さんも篠栗九大の森を訪れてみて、多品種の木々が林立する自然の素晴らしさを感じてみてはいかがでしょうか。

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